2012 外映画邦画トップ10

今年はきわもの揃いだぞ!!

1位 この空の花-長岡花火物語 

今年のトップはこれ以外にないだろう。なんたって自分の指折り3つに入ってしまったのである。ステーヴ・ジョブスは、妥協しない完璧主義によってIT産業の王になりiPodという凄まじい商品を生み出した。この作品の監督大林宣彦は、一切妥協しない全力投球でこれまでの映画にない技法を編み出してしまったのである。そしてこの監督の凄いところは、70歳を超える老人なのに革新派なところだ。資金の関係上、今まで通りフィルムが使えない。だからデジタルに挑戦しようという意気込みは、常に自分の撮りたいものを追求する新藤兼人や若松孝二監督に通じるものがあった。そのせいか映像にチープさがあるのだが、それが斬新なカットに見える事態が発生したのである。流石、毎度必ず新しい試みをする監督だけに魅せてくれた。彼のいままでの技術の結晶と言えるだろう。大林監督、笑いと感動をありがとう。 

 

 

2位 魔法少女まどか☆マギカ〔前編〕始まりの物語 

嘘だろっと耳を疑った。TV版をそのまま切り貼りした手抜き映画なのに皮肉にも大傑作だった。まず、この作品の編集レベルの高さに敬服である。そして、アニメのタッチの切り替えが非常に面白いのもポイントだ。萌画は輪郭を鉛筆スケッチ風に、服を普通に描くことで思春期の女の子の浮遊感を見事に表現している。そしてヤン・シュヴァンクマイエルの作品を思わせるシュールな背景の戦闘シーンは異界と現実を分ける描写として非常に上手い。さらに、この作品はただの萌えアニメではなかったことが2位に上り詰めた原因である。とにかく奥が深いのだ。願い事を一つ叶える代わりに、魔法少女という一生の負担をしょわせられるというシリアスな内容にさやかの悲劇が文芸もののごとく、「人間とは」を表現している。人間がきつい仕事を毎日こなせるのはやり甲斐があるからである。そのやり甲斐を失った時、人は地に墜ちることをストーリー・絵で表現しきっていてこれには泣けてきた。日本映画の底力を観た瞬間でした。 

 

 

3位 桐島部活やめるってよ 

よく映画版は小説版と比較される。大抵は、どちらかに軍配があがるものだ。しかし、この作品はどちらもハイレベルで軍配を上げられませんでした。ここでは映画版について語るとしよう。小説を読んで驚いたのが「映画版は小説版を自分の思うがままに改造し尽くしていた」ことである。ただでさえ、短編ものを一つに融合するのは難しい。それをいとも簡単に、そして小説版を超えたい一心で改変を行っているのが凄い。特に映画部の下りは遙かに小説版よりも面白い。やたらと映画に詳しすぎず、かといって全然知らないわけでもなく、時折マニアックなアイテム・事象を発動するところが上手いなと感じた。 

もちろん、小説版のテーマである「学校という階級社会の葛藤」も丁寧に描き切れている。

小説版で一番気に入った野球部の幽霊部員の葛藤も東出昌大が俳優デビュー昨にも関わらず、迫真の演技で魅せてくれた。陸上部について小説・映画ともに扱われていなかったのは残念だったが、傑作であることに間違いはない。

 

 

4位魔法少女リリカルなのは2nd A's

日本のアニメの凄いところは、「魔法少女 まどか☆マギカ」もそうだがコピー&ペーストでも皮肉にも素晴らしいクオリティーなところだ。まるで、文芸ものが何度リメイクされても評価されるようなポジションを担っている。そして、萌え画の裏に重厚なストーリーをねじ込むのが本当の日本アニメの力である。この作品では、不遇のファイター・ヴィータの描写がよくできていた。この作品の魔法少女たちは「アベンジャーズを呼ばなくても、日本からこいつらを派遣すればビルが破壊される前、人が敵に気づく前に事終わっていただろう」と思ってしまうほど強い。特に主人公なのはに関しては主人公だけにチート的強さを誇っている。そんな、強敵(ヴィータからしたら)なのはにある人物を守りたい一心で果敢に立ち向かうヴィータの姿に泣けてきた。しかもよく見ると、なのはより年下ではあるまいか。下克上とはこれほどまでに苦しいものかと思い知らされた。実はこの作品でなのはたちが対峙する敵は「周囲に危害を与えたくない。しかし、ある人を守るため悪事を働かなくてはならない。」という複雑な相手だったのである。

これも原作もろコピー映画らしいが、これまた一本取られました。

 

 

5位黒部の太陽

特別上映会で観ました。「映画は映画館で観るもの」としきりにDVD・ビデオ化を阻止してきた裕次郎の思いがひしひしと伝わってくる非常にダイナミックな作品でした。難易度が非常に高い黒部にダムを造ろうと奮闘する男たち。しかし、度重なる壁の崩壊&洪水で皆の士気がどんどん奈落へと墜ちていく。しかし、それでも「ダムを完成させたい」一心で粘り粘り続ける男たちに今の日本が忘れつつある「希望の光」を照らしてくれた。またドキュメンタリーさながらのリアリティーがさらにこの熱いドラマを盛り上げていた。今こそ日本人が観るべき作品と言えよう。

 

 

6位テルマエロマエ

「漫画の映画化」はアメリカで言う「続編・リメイク」に匹敵するくらい頻繁に日本で行われている。しかし、その多くが原作を超えられていない。それは何故か?漫画って大抵連載中、あるいは数十巻に及ぶため、時間の尺とエンディングの問題が発生するのだが多くの作品がこれに対処できていないからである。例えば、「GANTZ:PERFECT ANSWER」では数十巻に及ぶ内容を「前半はアクション、後半は謎解き」と分けるところまでは良かったが、PERFECT ANSWERと言っている割に上手に解表示ができず、結局「微分にも問いに答えていない状態」になってしまった。しかし「テルマエ・ロマエ」は違う。原作がワンパターン、毎回の繋がりがあまりないため普通に描いただけだとストーリーを追っているだけになる。しかしこの作品では、小道具しかり、入念に練られたオチへと導くためにあれこれ仕掛けを設置していたのだ。笑いとは、役者が演じて笑わすから笑えるのではなく、背景にあるストーリーや展開があってこそ笑えるのだなと痛感させられました。物語も原作にないものだが、上手いこと1話と1話の繋ぎにしておりナイスでした。おみごと!

 

 

7位???

最近試写会で観て「書き込み封じ」を掛けられた作品のため詳しくは言えませんが、

一言で言うと深いストーリーがある「悪の教典」である。

4月くらいに公開予定だそうです

 

 

8夢売るふたり

これは珍しく、レイティングから褒めるべきであろう。日本のレイティングは、最近は厳しくなった気がするけれど海外に比べたら随分甘いレベルである。それだけにR指定で下ネタ映画ではない時、僕は身構える。なんたってPG12でも「ヒミズ」や「KOTOKO」のように怖かったりするからである。さてこんな身構えている状態で、松たか子と阿部サダヲがジェットコースターのようなスリルを全力演技で表現している。夫婦間で結婚詐欺を始めるの。しかし妻役を演じる松たか子が、ドンドン精神的に悪魔になっていく。夫の真面目な行動に段々嫌気がさしてくる妻。この時の一触即発な様子が怖かった。また阿部サダヲの演技も神がかっていて、まさに松たか子と阿部サダヲの演技合戦でした。作品としてはラストがちと残念だったが、西川監督作としては最高傑作と言えよう。

 

 

9位渾身

この作品は映像が素晴らしい。

マジックアワーで映す隠岐の島の美しい海に惚れ、そして躍動感あふれる相撲描写に興奮した。ドキュメンタリーのようでどこか違う不思議なカットも印象的だった。ストーリーも普通、この手の作品ならお相撲さんの戦いにフォーカスを当ててしまいがちだが、お相撲さんを支える人たちに焦点を当てることでラストの戦いに重みをのせることに成功させていた。もしドラでも「観客がいるから野球は成り立つ」っていっていたけれど、それを証明してくれた作品でした。錦織監督はこれから伸びる人だな!

 

 

 

10位悪の教典

「これは人殺しを楽しむ映画」と割り切って考えると傑作である。人間は実は心のどこかしらに暴力を求めていると思う。現に、今年初めに発行されたTIME紙の「今年を生き抜くためにすべきこと」リストのようなところに「ストレス発散のためにヴァイオレンスゲームをしよう」と明示されていたのである。だから、大島優子がこの作品の試写会でボロクソに酷評したのにはちとガッカリである。なぜなら、多くの人を蹴落としてきた彼女ならこの痛快感は分かるはずだと思ったからである。閑話休題、さてこの作品がヴァイオレンス映画として傑作な理由をお伝えしよう。まず、伊藤英明がナイスキャストなところだ。彼自身が潔白そうなイケメンだがダークな部分を持っていそうな人そのものだったからである。だから、彼がショットガンを持ってニタニタしながらぶっ放しても全然違和感がなかった。次に伊藤英明扮するハスミンがぶっ放すショットガンの音が凄い。僕も中2の時、ハワイで拳銃とライフルを撃ったことがあるが、音がヘッドホンをしているにも関わらず大きかった。そんな大迫力の銃声を再現していたのだ。こんだけ大きな銃声だと霊が見えているのに怖いホラー映画である。まるで初めて銃を撃つかのようなドキドキ感が全編に立ちこめる。「撃つよ、撃つよ~はいドン!」みたいな興奮を味わえた。ここまで来るとギャグの領域である。自ら袋のネズミになっていく生徒たち、時折決めぜりふを言いながら処刑するハスミンそこに笑いの要素が隠されていた。そして次第に伊藤英明に感情移入し、「そらやっちまえ」と思っている自分に恐怖を抱いた。漢文で人之性悪ってあるけれど、あれは本当だなと思った。