2012 家映画邦画トップ10

園子温VS大林宣彦

1位冷たい熱帯魚

 

園子温監督は役者にこだわり最高の狂気を作り出す。

この作品ではでんでんの狂気の沙汰な演技に衝撃を受けた。

まるでジェットコースターのように、最初は優しいでんでんが段々狂気を魅せていき、

そして吹越演じる男を奈落の底へ突き落とす。奈落から脱出しようとするが、妻や娘が洗脳されているため抜け出せず、口止めもされているため警察も使うことができない。

悩みに悩んだ末、主人公は今まで自分が出したこともない狂気で対抗していく。今年、一件似たような事件がニュースで報道されていて怖くなりました。本当に怖いのは人間であることを物語った逸品でした。

2位青春デンデケデケデケ

 

今年度は自分の卒業を控えているためか、こういう卒業映画が胸にしみる。

高校生たちが、音楽に目覚め音部を仕切り、文化祭を成功させて卒業する。

なんか自分の高校での陸上生活と重ね合わせて観て「もう自分の青春も終わってしまうのか」と切なくなりました。高校生活って、文化祭と似ている。文化祭の準備は自分たちのやりたいことを、脱線しながらも模索する。これが高一だ。そして祭りが始まる高二。自分たちの可能性を信じて大いに盛り上がる。そして高三。祭が終わり哀愁が漂うが、後ろを気にしつつ次へと突き進む。大林監督は青春を描くのが上手いが、これほどまでにリアルに描くとは思っていなかった。心が涙で満たされた作品でした。

3位午後の遺言状

 

今は亡き巨匠新藤兼人が生み出したコメディ。監督は一見真面目な作品でも、時折ユーモアを魅せてくれる。この作品では、おばあちゃんたちの絶妙な緩さが笑いを誘った。

強盗がばあさんたちの空間に出現して脅しても、あまり驚かず慌てず対処する様子(強盗も相当間抜け)や、強盗逮捕の功績を称えて何故かボケ老人に賞金が渡されるシーン。ボケ老人は金を使えないと、周りのばあさんが駆け引きしながら賞金を取り合う様子など、私が好きなゆるーいギャグの連発に腹筋崩壊級に笑えました。タイトルは厳ついけれど、中身はこれほどまでにユーモラスだなんて誰が想像出来よう。

4位CUT

 

TV局の関与で中身が失われつつある日本映画の良さを訴えたのはイラン人監督だった。

今の陳腐で大量生産される映画に犯される人々を救おうと、野外上映会を開く主人公。

そんな彼を借金までして支え散った兄の存在を再確認され、主人公は「殴られ屋」によって借金返済の金を稼ぐことを決意する。どんなにボコボコにされても愛する映画のために頑張る。これぞ真のラブ・ストーリーだなと感じた。ラスト、主人公の走馬燈のように流れるあのカットの格好良さも魅力である。外国人監督に言われちゃ駄目だぞ、日本の映画監督たち!

5位バーバー吉野

 

吉野刈りというダサい髪型するしきたりがあるとある村に引っ越してきた少年が、吉野刈り風習を広めたバーバー吉野と戦う様子を描いた作品。これには深い意味がある。子どもたちを同じ髪型にすることで、制服と一緒で集団意識を起こさせる。昔の日本でも皆丸刈りにした理由が、もし違う髪型にしたらアウェー感に苦しむorいじめ等で自然と異端児は弾圧されるといった風紀の維持である。現に、村の子どもたちは主人公以外最初は自分の髪型に疑問を持っていなかった。それだけに、主人公が「吉野刈り=ダサい」を広めた時のバーバー吉野の怒りっぷりは納得である。なぜなら風紀の維持のほかに、吉野刈りはバーバー吉野しかできないから彼女の収入源でもあったからだ。今まで、独占的に利潤を得ていたバーバー吉野。このまま吉野刈り離れがきたら、自分の収入が減ってしまう。しかも長年吉野刈りばっかりしてきた彼女にとって、一流のヘアスタイリストのようにアーティスティックな髪型は作れない。だから必死に主人公を追いかけていたのだ。このように、一見のどかなドラマだが深い中身が秘められた作品なのでした。

6位恋の罪

 

アダルトビデオは観たことないけれど、「エマニエル夫人」みたいなアダルト映画は何本か観たことある。しかし、いずれも人間の性欲を満たすのに特化してストーリーが浅い。しかし、この作品ではこの手のアダルト映画ならではのギャグを取り入れつつも、ある女性の悲劇を描ききった渾身の作品である。物書きで稼ごうとし全然物を書かず退廃的な生活を送る夫を抱える妻。一見裕福なうちに住んでいるが、日々夫からの重箱の隅をつつくような要求と変化のない生活に嫌気がさしていた。そんな時に、アダルト業界への勧誘があって、妻は日常へのスパイスを求めるがごとく風俗業へと墜ちていく。園子温監督は、市民がいかに小さな出来事から地に墜ちるのかをよく研究している。「冷たい熱帯魚」もそうだけれど、普通の生活がある出来事で失われる様子を描くことで私たちにリアリティと恐怖を与えてくれ、平和ボケに警告を鳴らしていると思われる。しかもこの作品では、「愛のむきだし」以来の文芸的脚本もうかがえるので、最後まで飽きさせないアダルト映画でした。

 

7位空中庭園

 

母親の思いが詰まったルールに縛られた一家の崩壊と再生をユーモラスに描いた作品。

母親役を演じた小泉今日子の、「心で怒っていても、笑顔」という演技は「東京物語」さながらの怖さを持っていました。親にひどい扱いを受けた過去があるから母は「何事もつつみ隠さず、タブーをつくらず、できるだけすべてのことを分かち合う」というルールを定めている。しかしみんな家族の誰にも言えない秘密があって、その秘密が集まって事件が起きる。今まで信じてきた法を家族皆が破っていて、悲しむ母。その母を観た家族があることを思いつく。このラストの「再生を表すワンシーン」が泣けてくるんだよねー

親に感謝したくなるそんな作品でした。これ以上言うとネタバレになりそうなので、ここで終わらせるとしよう。

8位異人たちの夏

 

大林監督のノスタルジック描写は本当に泣けてくる。

しかも斬新な映像技術や演出が必ずあるから面白い。

この作品は、「三丁目の夕日」もビックリな橙色に輝く懐かしの時代へタイムスリップした男を描いている。死別した両親との再会シーンが泣けてきます。両親と再会し、飯に招かれる。そこで出される白飯や魚、すき焼きが画面外にいる私にまで漂ってきて、「大切にしている人との食事はこれほどまでに懐かしく目から滴がでるものなんだな」と思った。

しかもただのノスタルジーに浸らせお涙頂戴ものにするのではなく、最後の最後で魅せる衝撃のシーンをわざわざ挿入したのも見ものである。ラストのシーンは作品崩壊かもしれないが、思い切ったことを妥協せずにやる大林監督の映画魂が込められているからこそ許せるシーンと言えよう。今年は、彼の作品から笑いと元気をたくさん頂きました。

9位スワロウテイル

 

 

グローバル化の闇が暗示されている作品。

アジア移民の少女が、日本語も上手く話せないのに日本(厳密にはイェンタウン)で仕送りするために力強く生きる。最初は苦手だったが、段々と力強く生きる若者たちに感情移入し応援したくなった作品だ。岩井俊二の不思議なカメラワークやBGMにも惚れた。しかし、同時にグローバル化が進むことで今まで町中歩いてもスリや強盗などといった犯罪に巻き込まれない清き国日本だったのが毒に侵されてしまうのではという恐怖も抱いた。グローバル化とはモノ・ヒト・サービスすべてを受け入れる事である。グローバル化したおかげでモノを安く買える・多面的な情報を得られるなどと言った利点はあるものの、この作品みたいに汚い犯罪が街に蔓延る危険性もはらんでいる。これからは、そういう毒とも上手くやっていかないといけなく、力強く私たちもサバイバルしないといけないんだなと思わせられた作品でした。

10位キッズ・リターン

 

北野武ってやっぱり映画作りが上手いなと思わせられた逸品でした。

ある不良と、ノーマルな友人とがボクシングを始める。不良はある人に敗北し、自尊心を傷つけられたため復讐に燃えている。しかし、皮肉にも遊び半分のツレの方が上達してしまう。んで不良はやくざの道に、ツレはボクサーの道に行く。それで卒業後、不良が「それぞれの道のトップになったらまた会おう」と言う。この台詞、バディ(?)ものの中で一番ぐっとくるシーンだ。そして、この台詞をラストのあの名言に繋げるところに監督のすごさを感じた。一見誰にでも作れそうなエンディングだが、いざ作るとなると作れないいわばコロンブスの卵のような作品でした。