「ニッポンの嘘 報道写真家福島菊次郎90歳」:キネマ旬報ベストテン第1位鑑賞会にて

放射能の恐怖が時を超える

「ニッポンの嘘 報道写真家福島菊次郎90歳」:評価90

監督:長谷川三郎 出演:福島菊次郎

 

 キネマ旬報ベスト・テンの第一位鑑賞会&表彰式に参加してきた。その祭典のトップバッターがこいつだった。そして、久しぶりにドキュメンタリーに釘付けになった。
 この作品では、戦後広島と東日本大震災という二大放射能惨事を撮った数少ない人物である菊次郎さんに迫った作品である。彼の職業が報道写真家だけに、いかに彼の写真を使うのかに監督の腕がかかっているが、この作品では見事菊次郎さんの素晴らしい作品を紹介し、彼の人生観や苦悩の日々を映しきっていた。
 そもそも福島菊次郎の写真は独特だ。例えば、戦後原爆症で苦しむ一家に密着した時代の写真がある。この写真は、どこか別世界のまるで作り物の世界のように見えるのだが原爆症の悲惨さを全体に染み渡らせている。構図もなんか格好いいのだ(撮られた人には申し訳ないが)。こんな強烈な放射能被害の写真を見たら、東日本大震災の影響で生じる人体影響の恐怖に震え上がるなと感じた。その点で言えば、「チェルノブイリ・ハート」に匹敵する強烈さと言えよう。
 そして、そのような凄い写真が生む大変さを上手く監督は語らせていた。普通にカメラのシャッターを切ると、警察に怒られるから、カメラをあらかじめピントを合わせ、歩きながらさりげなく撮る手法。留置所覚悟の決死の交渉など福島さんの反骨精神むき出しの暗躍っぷりはまさに尊敬ものでした。
 それでもって、90年の生活でまるくなったのかユーモアたっぷり、のんびりとした感じで話しているからグイグイ引き込まれた。
 ちと「ニッポンの嘘」って部分の押しが弱い気がしたが、観客の目を奪う傑作でした。
 さて、図書館で彼の本でも借りてみよっかな!