「横道世之介」:TOHOシネマズ錦糸町にて

「間」の使い方が神がかってる!!!

「横道世之介」:評価95

監督:沖田修一 出演:高良健吾、吉高由里子etc

 

 邦画で160分、しかも青春劇。邦画の中途半端に長い作品は間延びする風潮があるだけに、また、予告編が苦肉の策な雰囲気がしたことから、死亡フラグが観る前から立ちこめていたのだが、観てびっくり!これほどまでに笑えて切なくなり、「ジャンゴ」や「ゼロ・ダーク・サーティ」よりも短く感じるとは思いもよらなかった。

 衝撃はあと二つある。

 まず、衝撃その一。まさかの法政大学全面協力なところだ。通常劇中に学校を使う場合、学校名を変える。たとえ、学校名を使ったとしても表面上の使い方しかしない。しかし、この作品は法政のリアルを描いている。入学式が武道館なのも、しかり。やたらと激しいサークル案内や法政の野球ソング、マスコミ研究会まで描いているのだ。あと数週間で入学の私が、内部生だから知る深いところまで表現することで「大学生の青春」をここまでリアルに、そして懐かしく思わせることに成功していた。

 衝撃その二。映像と脚本の組み合わせが絶妙なところだ。この作品。コメディでもあるのだが、おそらく脚本を読んだだけではまったく笑えないだろう。登場人物が話すことだって「新しい靴を買わなきゃ」に匹敵するほど貧相だ。しかし「間」を使うことで、5分に一度笑える仕組みになっている。しかも大抵の作品は前半にコメディ部分を入れたら後半は真面目で一気に失速するのだが、この作品においては本当にコンスタントに笑わせてくれるのだ。では、どういった「間」が使われているのか?

 一言で言えば、「死亡フラグを立たせる『間』」である。誰しも大事な話があるオーラを出した後5~10秒の間は緊張する。ましてや主人公である横道はかなりテキトーかつ浮気なタイプである。だから、女性から真剣なオーラを出されると「別れてしまうのでは」と不安にかれれる。その修羅場を幾度も描くことで、本当の恋愛さながらの緊張感、そして修羅場を抜けた後の面白さに胸躍らせられる。また「間」はコメディ部分にも使われていて、変な先輩との気まずい雰囲気、勘違いの面白さを十分に引き出している。

 そして、その「間」と映像のカットを使ったお気に入りのシーンがひとつある(ネタばれあり)。

 横道の楽しい生活のシーンの後、車内かつ雨を思わせるシーンを入れる。観客は「誰かが不幸になったのでは?」と感じる。すると、ウィーンと何かが開いて晴れになる。なんとガソリンスタンドの車洗浄機の中だったのだ。しかし、現れたのは「誰だよこいつ」といわんばかりの人たち。何が起きたのか理解できないのだが、次のシーンで「横道の友達」とわかる。そして大学生活から10年くらい経過し、横道が今や音信普通だと知る。

 この「モンタージュ効果」を利用して観客を裏切る脚本はここ2年で一番すごいなと感じました。

 このように青春恋愛劇なんだけれど、一筋縄にいかなく笑えて懐古にかられるまさに心のサプリメントといえる作品であろう。