「偽りの人生」:TOHOシネマズシャンテにて

そっそんなに偽らなくても...

「偽りの人生」:評価5

監督:アナ・ピーターバーグ 出演:ヴィゴ・モーテンセン、ソレダ・ビジャミルetc

 

 ヴィゴ・モーテンセンが一人二役に挑戦したギャング系サスペンス。

 

 ある双子うち医者として成功したものの、退廃とした毎日に飽きている男がいる。そんな彼の元に、もう一人のダメ男がやってくる。末期ガンにかかっているから殺してほしいと頼む彼をその医者は衝動的に殺す。そして刺激を求め殺された男に成りすまして生活を送るのだが、そいつは犯罪に手を染めていて泥沼の生活が始まるという話である。

 

 尊厳死の話があまりにも軽く描かれていて、さらに成りすます必然性を全く持って感じることのできないストーリーにげんなりしてしまった。

 この手の特殊な現象、しかもSFでもない話を描く際に必要なことは「必然性」である。主人公が気晴らしに成りすますところにおいては、別に必然性の証明をしなくても観客に主人公の心情を納得させることができるが、いつまでもギャングとの泥沼化した抗争に「偽り続けて存在する」必然性を描かないと違和感ばかりが残り、観客を世界観から放置プレイしかねない。あの奇人ウィリアム・バロウズのドラッグでぶっ飛んだ勢いで書いた小説を映画化した「裸のランチ」の場合でもきちんと証明の描写がある。薬や酒の描写をちりばめることで「中毒症状に陥っているため、超常現象から脱出不可」という証明をしているのである。せめて、兄の尻拭いをしなければ自分の命や奥さんの命が危ないと思わせる描写はほしかった。

 ラストのギャングの親玉との戦いは時代劇チックなカッコよさを演出していて唯一の救いだったが、やはりこの映画は「偽りの人生」を送るための条件が欠落していて非常に退屈な作品でした。