「トゥ・ザ・ワンダー」:試写会にて

ダンディズムvsフェミニズム

「トゥ・ザ・ワンダー」:評価85

監督:テレンス・マリック 出演:オルガ・キュリレンコ、レイチェル・マクアダムス、ベン・アフレック、ハビエル・バルデムetc

 

 凄い映像と神秘的な話を組ませる際、撮影監督との相性が重要となってくる。テレンス・マリックはその点で天才。現代のイングマール・ベルイマン(彼は主に、スヴェン・ニクヴィストグンナール・フィッシェルを右腕とした)と言えよう。彼は、この前の「ツリー・オブ・ライフ」であまりに観客を置き去りにするスタンスの作品を撮り物議を醸した。今回も撮影監督は同じくエマニュエル・ルベツキ(「トゥモロー・ワールド」や「ジョー・ブラックをよろしく」の撮影担当)を任命、「感情3部作(勝手に呼ばせてもらおう)」最終章を完成。観客の脳と戦いを挑んでみた。

 今回の作品は、前作よりもヒントが多く、しかも感情移入しやすい。そしてこれまた浮遊感あふれる映像に酔いしれ、「ツリー・オブ・ライフ」に存在する不快感を払拭した美しく残酷な心理描写を紡ぎ出している。

 テーマは「越える愛」である。

  

  男女の愛の対立が丹念に紡がれる。一組のカップルがいる。一人はフランス人で

 女性一人娘を抱えるシングルマザー。そのお相手はアメリカの男だ。そのシングルマ   

 ザーとアメリカの男はフランスで出会いパリやモンサンミッシェルを満喫するうちに  

 ラブラブになり、男のふるさとアメリカへと誘われる。しかし、ご存じの人も多いか

 もしれないがフランスは離婚が非常に難しい国である。なんと女の元カレが全然離婚

 承認してくれないらしく離婚できないのだ。だから、新しい理想の夫とも結婚できず

 に悩まされる。こんな厄介な状況で娘が言い放つ「なんでママは結婚しないの?」とい

 う問いかけが痛々しいほど胸に刺さる。そして、自由の国アメリカに渡っても「離婚」

 という鎖から解放できずぐだぐだしているうちに、女のビザが切れてしまい別居に陥

 る...

 

 さて、ここからが問題だ。女性目線でみるか男性目線でみるかで話は変わってくる。男性目線で見るとどうなるか?男性は主に恋愛の情事を楽しむ傾向があるようで、目的達成(結婚等)すると急に冷え切ってしまう。現に「31年目の夫婦げんか」でもその様子が描かれている。また、男は「不倫は文化だ」という言葉があるように「愛」の薫りがあるほうへとうつつを抜かす。一途を貫きづらい民族なのである。一方女性はどうなのか?女性事情はChe Bunbunが男なので詳しくはよく分からないが、どうやらいろんな映画や妹の動きを観察すると、「永遠の愛」を求めているようだ。特に主人公の女性はフランス人。フランス人は林瑞絵著「パリの子育て・親育て」によると、「人生のパートナー」を追い求める民族であり、パートナーになり得ないなら簡単に捨てる国民性を持っているようだ。そして先述の通り、離婚がメッチャムズイ。つまりこの女性は「結婚しない族」が多いフランスにおいて元旦那と結婚の儀式を行うことから愛欲が強い傾向にある。そして、法律という鎖でもってお目当ての男性と永遠の愛を交わそうとするぐらい愛欲が強いのだ。

 男としては、遠距離恋愛に希望はないから他の女に乗り換えたいのだが一度仕留めてしまった女の鎖は強く容易にキレない。非常に困ったものだ。

 テレンス・マリックはこの愛のジレンマを超えた先の驚愕(Wonder)な絶景を見せることを主軸に描いたのだろう。いつ転落するか分からない絶望の社会。人々に希望を説く神父さんまでもが絶望している時代に強い「愛」で結ばれることで希望を見いだす。荒く壊れあいながら神々しく光る水晶球を作る。それが現代を生き抜くすべだと言いたげな映像だ。

 ところで、インドには愛の5段階と言うものが存在する。第一段階が師弟関係、この上下関係がなくなり第二段階の友人関係となる。さらに進化すると親子関係となり、四段階目が夫婦である。そして愛の最終形態は不倫関係。親と子、夫と妻という関係から解き放たれた究極形態である。

 しかし、一般的に不倫は不純でありまた不安定でもある。そこで監督は「夫婦」→「不倫」→「夫婦」というプロセスをとることで強固で純粋な愛を抽出することに成功させた。こう深読みすると怪しい話ではあるが、神秘的な映像という魔法がこの怪しい話をファンタジーへと転換。観客をTO THE WONDERへと誘うのである。