自動車教習所日記~6日目~

Paris,Texas(ライ・クーダー)

 石巻駅周辺の町は西部劇やロードムービーに出てくるような田舎町のように長閑だ。そして、この町にはヴィム・ヴェンダースの「パリ・テキサス」のサウンドトラックがマッチする。超スローで荒野を干し草がごろごろと転がるイメージ。さんさん照りつける、天の光線。人々は汗をしたたらせながらも、スローに流れる時に身をゆだねたらたらと歩く。時折通過する車の勢い、排出されるガスが熱気へと変えられ俺らを苦しめる。でも気にしない。都会の喧噪して時間に追われる世界はここにはない。ゆっくり進もう。出口は気にしつつも。

 さあ、MTからATに変えた俺の世界は明るかった。2日目だっけか3日目だっけな、あの頃出会った落ち武者と遭遇。

 「~教官はいらっしゃいますか?」

 「んっどうした?」

 「昨日教官に、MTからATに乗り換えた方がいいよとオススメされたため、ATに変えたいのですが」

 「ああ、できるよ、こっちへ来なさい」

と優しく待遇してくれた。やはり、あの教官の落ち武者だった日は本当に体調が悪かったのだろう。やはり、この教習所に悪代官はいなかった。昨日観た「トラック野郎」の一番星のようにジグザグ走行、時速100kmで暴れることはできない。毎日が「恐怖の報酬」な俺は安全第一、カーブは超慎重に運転しよう。周りの教官も俺の走りを見て安心したのか表情が明るいぞ!なんたって、毎回停止時にローギアに入れなかったり、ギアチェンジに戸惑ったり、カーブが雑だった彼が、多少の脱輪やミスはあるものの、すぐに軌道修正して華麗にやりきるのだ。停車時とS字カーブを気をつければ万事OKだ。先生もうれしいよと言わんばかりの態度で私に接してきた。

 恐らく、自動車教習所の教官はストレスがたまる仕事なのだろう。いつ暴れるか分からない時限爆弾を抱えたマシンを一日5時間くらいも見守らないといけないのだ。だから、喫煙所では漢が煙をふかせながらたむろする。喫煙所の哀愁は見ているとどこか連帯感があり滑稽でもある。生徒はまだかまだかと干物になりそうな表情をよそに、先生たちは屋外のスモーク・サロンでだべってる。おじいさんの話し方が「テルマエ・ロマエ」の平たい顔族のようだ。そう観察してしていると、再び教習が始まる。練習できるのはこの時間を含めて3時間だ。集中しよう。エンジンをかける。ブレーキをかけて、パワーボタンを押す。ドライブにギアを入れる。フットブレーキを外す。右にサインを送りバックミラー、サイドミラー、横目視する。やもめのジョナサン行くぜと出発。そして、現れる「止まれ」のサイン。右左よっしゃ前進。カーブは深く曲がる。直線ロード。キックダウンで時速45kmまであげる。ワイルドスピードのニトロ使用時のような反動を受ける。ブレーキで速度を落とす。カーブまで30m。時速32km、20m、時速24m、10m、やばい時速20km速い、カーブまで3秒前2、1よし時速15kmだ。よし曲がろう。曲がる?よし左にシグナル、3...バックミラー確認。2...サイド。1...真横。左だ。あっつ危ね。スピダウ(スピードダウン)、スピダウ。こんな感じで、何とかこなす。顔は余裕綽々で。あと2時間で駐車した後の椅子戻し。駐車位置をマスターしよう。チェックはチキン根性で何とかなるぞ。テストも自己最高点の47点(50点中)たたき出して。アカルイミライが見えてきた。

 

 飯まで4時間もある。俺らは北部の町に降り立つ。駅前のデパートが震災で、市役所に乗っ取られ、石巻駅前に閑古鳥が泣き叫ぶ。俺らは、デパート市役所の一階部分の僅かなデパート部分で買い物する。最中アイスと、ピカチュウのパチパチキャンディを買う。俺は駄菓子が好きだ。そういえば数日前にリアル駄菓子屋を見たなーどの辺にあったっけ?行きたいなと思っていた。すると、友人も行きたいと言うので探してみることにした。2人集まっても文殊の知恵。すぐに見つかった。ゲームセンターCXの有野課長も好きそうな風情ある駄菓子屋だ。俺らは、こんにちはして買い物をする。久しぶりに出会ったココアシガレット。たばこは吸いたくないがこれを吸うのは大好きだ。パイポにも躊躇する俺の嗜好品である。再会に悦びを覚える。しかも残り一箱だけにバンザイだ。店員のおばちゃんは歴史資料館に置いてあるような大きなそろばんで会計をしていて、物珍しそうに俺らは見つめていた。そんな俺が買った品々は次の通りだ。

・あわコーラ

・シャンペンサイダー

・カットよっちゃん白

・ポケパチ(グレープ)

・氷砂糖

・ココアシガレット

・きなこ棒

計170円

大満足した俺らは帰宅。友人はフランス語の勉強。おれはシガレッツを指に挟み、石ノ森章太郎の聖地石巻にいるからと「サイボーグ009超銀河伝説」を鑑賞。分かってはいたが、「サイボーグ009 RE:CYBORG」とのタッチが180度違った。特にイギリス出身のサイボーグが、前者はお茶目役なのに、後者は超イケメンエージェントなのだ。全く変わらないのはジョーとハインリヒだけだ。とはいえ、「サイボーグ009超銀河伝説」の絵のタッチも受け入れられる。特にハインリヒが、仲間にさらばして敵陣に神風特攻する場面が感動的である。しかしだ、エンディングが酷すぎて萎えた。神風で散ったはずのハインリヒが死者蘇生したのだ。遊戯王じゃねえぞとお怒り。やはり、俺は絵のタッチは違えどRE:CYBORGのアクションとストーリーを推すねー。そして、ハインリヒには惚れるぜ。

 夜、俺らは映画の話で盛り上がった。中学時代に観て記憶の奥底で眠っていた思い出を友人との対話で引き出してもらい、また友人が想像以上に映画に詳しく、特に俺の得意分野のB級もバリバリでき、友人からもオススメ映画を沢山教えてくれたので楽しく団らんした。明日は早く帰れるし「パシフィック・リム」でも観るとしよう。

さて、夜も更けた。寝るとしよう。