自動車教習所日記~12日目~

セントレイ(サカナクション)

 時と時が紡ぎ出し、正しい道へと選択する毎日。あと数日で長いようで短い監禁生活から釈放される。木曜日の壁さえ超えれば、ヘブンの青い空が見えるであろう。8/24にバイトで働く俺が見える。1000はもう見えた。0に私は立っている。1000の最後まで手で数えられるのだろうかと不安を抱きつつも、効果測定3日連続合格したことを勇気の糧とし数えていく。ATフィールドを引き裂き、敵を粉砕しつつある。あと4。あと4光が降りた時、運命の裁きが下され、4闇が降りた時光でかき消す楽園に自分が存在するか、あるいは暗黒に包まれた失楽園を彷徨うのかが決まる。怖いが、滑り出したスキーをスタート地点に戻すのは難しい。険しき道を滑走するしかないのだ。耐えるんだ。

 さてそんな彼の不安は夢になって現れる。

 

 こんな夢を見た。車の中に「彼」はいる。他に女と子どもがいる。外は煤で灰色の風景が立ちこめる。「彼」は恐る恐る、外へ出てみる。すると世にも恐ろしい「ブラックホーク・ダウン」のソマリア市民さながらの怖い・速い・強いゾンビが沢山攻め入ってきた。ショットガン片手にぶっ放すが一向に埒があかない。仕方がないのでビルに逃げ込む。壁を突き破ってゾンビの手が沢山襲いかかる。「彼」らは袋の鼠の如く角に追いやられる。絶体絶命だと思った瞬間、目の前が真っ暗になった。気がつくと部屋の一室に「彼」だけがいる。目の前にスクリーンがあり、「ブラックホーク・ダウン」の市街戦のシーンが流れている。丁度、男が車越しに追い詰められているところだ。ちゅいん!「彼」の右耳を何かがかすめる。もしやと思う、そのもしやが当たるものである。スクリーンから放たれる銃弾を「彼」はよける。「彼」の目線の先にブツがある。銃弾は降り注ぐが、ソマリア市民はスクリーンを越えて襲ってこない。「彼」は鉄の雨を匍匐前進で避けながらブツを手にする。そしてブツのボタンを押す。画面が変わる。そう、ブツとはリモコンだったのである。どうやら画面では戦争は起きてはいないようだ。

 「こっちへおいで」

セクシーなボイスが「彼」を呼ぶ。恐る恐る目を向けると、グラマーな女性がリムジンのような席に座っている。そして手招きしている。「彼」は恐る恐るスクリーンに手をやる。やはりスクリーンだ。工業繊維の感触が「彼」を突き返す。

 「もっと力をいれてきてよー」

女は魅惑のボイスで囁く。「彼」は後ずさりする。深呼吸を入れる。走る、走り幅跳びのように飛び込む。目が閉じていく...

 「ほらね、来られたでしょ」

彼女はそこにいた。しかし、よく周りを見渡すとリムジンではなかった。飛行機だ。

 「どこへいくんだ」

彼は訪ねる。

 「それはね、それはね...」

彼女は何かを言おうとしているのだが、意識がぼんやりとして...「彼」はベッドに存在してしまった。

 

 ドライブの味を占めた彼だが、ロードサイドも大好きである。彼は映画狂いだから、約5km先にある映画館も走って行く。今日の目当ては「ホワイトハウス・ダウン」だ。彼の知り合いが絶賛していただけに、期待度が高まる。うきうき全速力で駆け抜ける。もし、彼が石巻に住んでいたらボルトになっていただろう。映画のために死ねる男とはまさに彼の事である。そして、「ホワイトハウス・ダウン」のハイレベルなアクションとストーリーにすっかり感激、ご満悦のようだ。と言うのも、監督は人類の危機を30年も描き続け、ホワイトハウスの破壊はお手の物レベルにまでなった破壊の巨匠ローランド・エメリッヒなのだ。ついにアメリカ大統領の設定がアフリカ系アメリカ人になった。そして、あからさまなプロパガンダ映画なのに熱すぎて洗脳される。凄まじい作品だった。チャニング・テイタムもマッチョっぷりに彼は大いなる感銘を受け、青暗い夜道を走る。東京マラソンの選手になることを夢見ながら。19分31秒と陸上の世界から離れていたものの、体力は衰えておらずこれまたご満悦だった様子。走り終わりのシャワーは快楽である。がくがくなる足をアイシングする。足は気持ちよさそうに、落ち着いていく。少し熱い湯をかけると、精神の安らぎを味わうことができる。それでもって、風呂上がりの彼を待ち受けるのが飯タイムである。陸上部時代の合宿(実は高校3年間1回しか合宿に行っていないのだが)を思わせる、カレーが夕食である。ガレーのとろみとスパイシーさ。カレーの辛みを卵スープで緩和しながらかき込む。なんだか、クラッチとブレーキの関係と似ているなと思いつつ食す。デザートのガトーショコラで心は天使になる。しかし、彼を待っていたのは日記である。やはり一日2000字以上は流石にキツいなと思いつつも彼は粘って書き進める。ある意味文章合宿でもあるのだ。厳しいトレーニングを積んで東京に上京」したらパワーアップした彼を垣間見ることができよう。さて眠くなってきたぞ。寝るとしようか。明日は8時半から夜7時まで授業があるぞ。学科で寝かされないよう十分寝溜めをしとかないと敗戦する羽目になってしまう。欲しがりません勝つまでは、彼はノン授業を欲しがらないよう決心した。