重力の虹Ⅰ&Ⅱ(本) アンサイクロに対抗読書感想文

彼の妄想は暴走と化す...

 長かった...上下巻併せて約1000pくらいする。しかも、1ページ二段組みだから実質「レ・ミゼラブル」を読むに等しい根気がいる。一ヶ月かかった。そして、この本はやはり読み終わった後反芻しても、テーマは「いかに下ネタを婉曲に暗号化できるか?」だと思われる。現に、巻末に掲載されている巽孝之著「V2・デッドヒート」 

では以下のように書かれている。
  

  作中「ロケット人間」と呼び慣わされる彼は、ロケットのメカニズムを生理機能とし   

 て埋め込まれるに至ったレーダー人間。

 

 つまり、ロケットに男の要素をメタファーとしていれ、物理や心理学用語を多用して下ネタを上ネタとして暗号化させているのである。そして物語をかき回すために実験が沢山仕込まれていて、読者の想像力を試す。特にⅡでのカオスさは、Don't think,Feelしないと発狂するほどである。一応、理解度チェックと言うことであらすじを書いておく。

 

 主人公のスロースロップ。Ⅰでは、「海賊」という組織にテロリスト容疑として監視され、狙われる。スロースロップ本人ですらロケット落下と夜の交流との関係性を証明できないのに、パブロフの犬みたいな心理実験まで引き合いに出される。そんなさなか、超能力を研究している怪しいカルト団体もスロースロップを追い始める。彼は2つの組織に負われている身分なのにノー天気に好色一代男に負けんじと女性と関係を結びまくる。流石に、衣服を組織に盗まれたときには怒る。でもいくら捕まったり、超常現象にあってもヘラヘラしているのが彼である。それ故に、だまされて睡眠薬で寝かされ何者かに拉致られてしまう。ここまでがⅠである。

 Ⅱでは、何故かⅠで組織に拉致られたはずのスロースロップがアルゼンチンの怪しい集団と航海を始めている。そこで出会った映画監督〈跳ね駒〉と行動を共にすることとなる。スロースロップはいつのまにか「ロケットマン」というあだ名で有名人になっていたようで、〈跳ね駒〉はそんな彼の人生を映画にしたいと思い行動を共にするのだ。しかし、〈跳ね駒〉はクレイジーガイだったから、すぐさま科学者やら〈ゾーン〉や〈ゾイレ〉という組織に追い詰められる。そして、捕まえたと思いきやうなぎのようにするりと抜けて消息を絶つ主人公。挿話でもって謎が明かされていく。裸電球のバイロンもスロースロップを知っている。ゴキブリを恐れる赤ちゃん電球と対話しつつも、彼の世界にもスロースロップの影があった。カミカゼ特攻のタケシ&イチゾウだって、ロケットを見る。そして映画として人々の記憶に残る。そしてスロースロップの賛美歌と共にロケットは落ちる。敵である〈ゾーン〉を壊滅させるロケットが...

 

 おそらく、後半の挿話は、スロースロップが上手く組織から蒸発して敵陣にカミカゼ特攻したあとのインタビューととらえていいのだろう。そして、ラストの賛美歌にある

「時まで荒れにしわれらが〈ゾーン〉の至る所

なべての山腹に面貌あり 

なべての石に大霊宿れり...」

でが山にある〈ゾーン〉の基地に突っ込み、皆殺ししたろうというスロースロップの意思が表れていると考えられる。

 こうも考えてみたが、無数の突っ込みどころがあり、どう考えても一読では解読が不可能だ。カラマーゾフの兄弟よりは読みやすいものの、ピンチョンの知識洪水でもってステルス化された真髄をつかみ取ることは容易ではない。一読でやるべき事は、ボキャブラリーと表現の巧みな使い方を味わうことである。そして、インスピレーションをわかせましょう。翻訳者およびこんだけ無茶苦茶な作文を何百ページに渡って書いたピンチョンに尊敬だ。

 俺のアンサイクロペディア、「読書感想文にすると親呼び出しにされる図書一覧」一冊攻略は無事達成された。