「タイピスト!」:ヒューマントラストシネマ有楽町にて

鮮度高きヴィンテージ

「タイピスト!」:評価90

監督:レジス・ロワンサル 出演:ロマン・デュリス、デボラ・フランソワetc

 

 中学時代。オードリー・ヘップバーンが何故あそこまで人気なのかがよく分からなかった。しかし、この映画を観て60年代映画の美しさ、そしてヘップバーン映画の良さを再確認させられた。
 ストーリーとしては所謂、王道スポ根ものである。しかし、そのスポーツが「タイピング」なのだ。タイプライター全盛期。会社の秘書になるためにはタイピング能力が欠かせなかった。主人公の女の子は美人だが秘書能力に欠く部分が多かった。しかし、二本指タイプで高速タイピングできる能力を気障な経営者に見抜かれ、タイピング大会に出場させられる。やがて全国大会、最強のアメリカ打倒を目指すようになるといった話がこれである。

 スポ根ものと言えば、主人公の汗水垂らす努力、熱気が観客まで伝わってくる。女の戦いになると、「カリフォルニア・ドールズ」「ローラーガールズ・ダイアリー」みたいに醜さが露見するのだが、この映画は違う。最後までオシャレかつ可愛いのだ。

 「ティファニーで朝食を」のヘップバーンを彷彿させるお茶目さがデボラ・フランソワ扮するパンフィルにあった。そしてファッション。50年代の単色カラーをナイスにコーディネート。青いドレス姿とピンクのスカート姿がとても素敵だった。

 さて、ストーリーや撮影を読み解いてみよう。ストーリーは至って古典的。でも「アーティスト」のようにオマージュ、コピー&ペーストではなくオリジナリティを感じさせる演出が特徴的である。なんたってフォーカスはタイプライターである。きちんと、ハンマーが絡まないようにわざと打ちにくいQWERTYスタイルから、技術進歩によって打ちやすいスタイルへと変革を遂げ、やがてゴルフボール型のタイプボール搭載にいたる過程が描かれている。ただ、タイプライターと女性がにらめっこしているところを描いているのではない。そしてカメラワーク。窓際上方から、ゆっくりと下降して女性にフォーカスを合わせる当時のミュージカルっぽい撮影を使っていてヴィンテージ演出にこだわっていた。個人的な注文として、合成感満載のドライビングシーンを挿入して欲しかった。特にパリでのドライブシーンにその合成は似合うだろうと感じてしまったのが残念だ。

 とはいえ、ここまで時めいたのは久しぶりだ。この映画はデートで観ることをオススメする。たとえ、映写トラブルで希望の時間がなくても、どっかでお茶をして次の回を観るべきだ。「タイピスト!」はそんな映画であった。僕はヘップバーン映画を借りるとしよう。