「大統領の料理人」:シネスイッチ銀座にて

女だって「倍返し」を発動するわよ!

「大統領の料理人」:評価75

監督:クリスチャン・バンサン 出演:カトリーヌ・フロ、ジャン・ドメルソンetc...

 

 組織とは、実力があるほど保守的になるらしい銀行なら「オレたちバブル入行組」でも語られていたように本当に金を必要としている人には貸さない。リスクを伴うから。「ビッグイシューと陽気なホームレスの復活戦―THE BIG ISSUE JAPAN」で語られるホームレスのインタビューの中にも「家を借りたいのに、家がないから借りられない」といった苦言が呈されている。つまり、組織というものはリスクを嫌う傾向にある

 さて、大統領の料理人として女単身で乗り込む「大統領の料理人」ではどのような運命が待ち受けているのだろうか?まず、この女料理人は腕とプライドがあるから、理解ある大統領のために産地直送、こだわり抜いた食品を集める。そして、限られた時間の中でいかに完璧なコースが作れるか大統領はもちろん彼女自身にも挑む。「デザート一品でも欠けてるとコースが崩壊する」というから、如何に自分を追い込んでいるかがよく分かる。しかしそんな、ならず者新入りに黙っている奴などいない数十年も大統領の料理人として仕えたチーフが許さない。全力で邪魔をしてくる。また、大統領直属の医者経理担当も物申す。そこを華麗なる根回し、弁論で抵抗する主人公に半沢直樹のような興奮を抱いた。そして、組織社会で革新していくことがいかに難しいかを思い知らされた。この前読んだ「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」には、相手が戦略的に自主退社を促すのなら「戦略的思考」で対抗すべきだと書いてあるが、実はどんなに口達者でも組織カースト下位の者が上位転覆を謀るのはミッションインポッシブルだと思った。いかにメンタルを強く持つか、服従ではなく面従腹背でいられるかがポイントだと私は感じる。そう、この映画はフード映画ではあるが立派なビジネス映画なのである。それ故に、もう少しじっくり話を煮込んで欲しかった。某ファストフード店で行われていた60秒チャレンジ並に目まぐるしく安易に展開させすぎである。やはりフードも迅速に作られているにせよ、はやり最後は質である。入念に練られた脚本で迅速にクッキングしているのなら別だが、この脚本はライバルが作るデザートレベルで留まっていたと言えよう。

 もちろん、フード映画として観ても十分楽しめる。特に私を驚かせたのは、キャベツとサーモンを交互に重ねてゆでた作品だ。この作品の特徴はなんと言っても、完成形がゆで丸ごとキャベツなのだ。しかし、ナイフを入れると肉汁のようなエキス(実際にはキャベツとサーモンが織りなすエキスだが)がじゅわっとしみ出る。その切り分けると出現する層とエキスの分泌量に私のお腹も喜んだ。他にも沢山おいしそうな料理が出てくるが、それは観た人だけの愉しみである。是非食事前にシネスイッチ銀座に行ってみてください。