「エリジウム」:TOHOシネマズ錦糸町にて

その楽園、陽動にもろし...

「エリジウム」:評価65

監督:ニール・ブロムカンプ 出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスターetc

 

 エイリアンの新しい見方を開発し、SFの中にアパルトヘイトや貧困といった社会問題をねじ込んだ「第9地区」で有名になったブロムカンブ最新作。ハリウッドの安直な続編企画を跳ね飛ばして、またしても自分の撮りたい作品を撮ったようなので期待度が高まっていた。しかし「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ同様、あれだけの影響力を与えてしまった作品の次の作品はクオリティでいったら残念ながら劣ってしまうものである。

 ネタとしては、またしても貧困問題。超富裕層は人口爆発から逃れ宇宙ステーションで優雅に老化や病に苦しむことなく暮らしている。その楽園に来る移民どもは門前払いである。そんなさなか、事故で余命5日になった男がうまいこと宇宙ステーションに密入国して地球の貧民のために開放してやろうと目論む話だ。

 「第9地区」に比べると陳腐な民族解放ものとして捉えられてしまう作風で、アクション性だけわずかに上昇したかなと感じた。そして、なによりも宇宙ステーションのセキュリティが甘すぎて「ツッコミ映画」となっているのだ。まず、不法入国者の撃退方法が面白い。ステーション側からは法や権利関係が絡むため撃墜できないので、地球にいるスパイと通信をとり地球側から、ミサイルを発射しているのだ。なんと非効率なことか。確かにアメリカが間接的に中東の人を傷つけている描写を隠喩するためには面白い手法だが、これではミサイルが外れた場合宇宙ステーションに被弾する恐れがあるので危険だと感じた。また、このステーションは防衛大臣実質一人の独裁でセキュリティ管理されているので陽動作戦に非常に弱いのである。楽園内には天井すらないため、陽動作戦で現場が混乱すれば簡単に入国できてしまう。こんなもろいセキュリティ、100機ぐらい輸送機送り込めば入国できるのではと感じた。そう考えると、この宇宙ステーションが機能してから間もない時代の話なのかな?結局ラストシーンで、人類は滅亡の道へと歩んでいることを観客のみが知って終わる残念なストーリーでした。

 しかし、アクションシーンは見物である。日本のオタク文化に感化されたような、カラフルなロボット、機械装着&シンクロ、武器に「パシフィック・リム」を結局観られなかった私は興奮しました。特に、地球にいるスパイと主人公との戦闘シーンに熱くなった。どう考えても「メタルギア・ライジング リベンジェンス」を意識しているのである。屈強な刀使いが桜舞い散る通路で戦うシーンに懐かしさと興奮を感じた。

 さて、貧困問題ネタとオタク映画の引き出しを全開にしてしまったブロムカンプ監督。彼にまだ引き出しは残っているのか?これからが腕前の見せ所だ、次回作に期待である。