「凶悪」:ヒューマントラストシネマ有楽町

今年最大級鬼畜モンタージュここにあり!

「凶悪」:評価80

監督:白石和彌 出演:山田孝之、リリー・フランキー、ピエール瀧etc...

 

 実際に起きた未解決事件を小説化した「凶悪 ある死刑囚の告発」の映画化。豪華キャストを新参者の監督が如何にして調理するかが見物である。おそらく、今年度のキネマ旬報ベスト・テンに入るであろう。青山真治の似たような雰囲気を醸し出す「共喰い」との一騎打ちに勝てるかで入選が決まると僕は踏んだ。残念ながら「共喰い」は未観なため今回は触れないでおく。

 さて、近年の邦画における暴力描写は園子温監督の「冷たい熱帯魚」を筆頭にようやく韓国のヴァイオレント映画に追いついたと言えよう。今までの日本映画における暴力は、血糊加減が絵の具のようでありB級が漂っていた。皮肉にも「黒い家」という日本の小説を森田芳光が映画化するよりも韓国で映画化した方が上手い。赤と黒がドロドロぐしゃぐしゃに入り乱れる韓国版の凄まじさ。元々韓国が持つ「オールド・ボーイ」「チェイサー」「嘆きのピエタ」のような暴力表現に対するスペックの高さでもって、日本の戦慄小説の映画化を韓国に奪われてしまう危機がずっと続いていたのだが、園子温が「冷たい熱帯魚」で魅せたあまりに惨い描写でもって日本映画界に一つの希望を与えた。この作品はR-15だが、R-18ぎりぎりの目を覆う戦慄が待ち受ける。人体解体の描写の次のシーン後に挿入される描写に衝撃をうけた。人によってはしばらく肉を食えなくなるであろう。そして、リリー・フランキー演じる「先生」と呼ばれる男が老人を絞め殺す、酒を呑ませ殺すシーンのえぐさといったら!彼の笑い踊りながら人を殺める狂気、周囲のやくざもドン引きだが観客である僕も唖然とした。それ故に、段々「死刑」を求めるようになる主人公に賛同してしまうのだ。 「凶悪」の本当の意味は犯人にかかっているのではない。戦慄世界にどっぷりとつかりこんで、感情のコントロールを失い、家庭を崩壊させてまでもただ相手を「死刑」にするために血眼になることも「凶悪」なのではとこの作品は観客に訴えかけていた。

 この作品は、ただ現実と過去を交差させて事件を明かすスタイルではない。インディーズ監督ならではの実験的試みが施されていた。冒頭に事件の断片をちらつかせる。そして、主人公の調査のシーンを途中から事件概要のシーンに持っていくことで地味な調査活動の場面を割愛することに成功した。主人公が窓を覗く→「先生」が人を殺す→「先生」の殺人経緯へと現実世界から過去世界にシフトしていく過程が斬新だった。

 段々目が死んで、死に神のようになっていく主人公に「先生」が言葉を投げかけるラストで強烈なごり押しインパクトを与えていたのでベスト・テンレースはきっと勝ち抜けるであろう。まあ、後味は最悪。デートでは決して観るべからずな作品だが。