「陽だまりの彼女」:TOHOシネマズ渋谷にて

私を愛(あい)に連れてって

「陽だまりの彼女」:評価70

監督:三木孝浩 出演:松本潤、上野樹里、玉山鉄二etc...

 

 この作品は、原作を先に読んでしまうとげんなりする作品になりかねない。なんたって、原作のあまりにも衝撃的なエンディングを知ってしまった以上、それ以上の展開が映画で起こりうるとは考えがたい。その厳しい話題を映像や役者でカバーしきったのがこの作品であり、監督の工夫が凝らされた良作と言えよう。

 そして正直に言うと、この作品のキュンキュン感が激しくてホラー映画よりも画面を直視しがたい作品でもあった。何たって、上野樹里の浮遊感あるカノジョは、こりゃ誰だって時めいちゃうだろう。カノジョの秘密など詳しく聞く必要がない。時よ俺を愛の世界に連れてってとなるであろう。

 そして、カノジョとラブラブし始めた時からプロットは「転」へと移り変わる。今まで、会社でダメ後輩として扱われヘヴィータスクを負わされていたのに、そんなものは物語から排除される。現実世界から架空世界へとのシフトの仕方が、「オズの魔法使い」のようにロマンチックだなと感じた。また、この作品は「前半の会社生活」、後半の「ラブラブシーン」、そして過去の「中学時代」の描写において映像のタッチを違えることでメリハリをつけている。しかも、過去の描写への移動は唐突に大林宣彦映画っぽく描いて主人公の記憶ですよとアピールする一方、「会社生活」から「ラブラブシーン」への移行はグラデーションのごとくじんわりと移るからリアリティがある。特に、グラデーションをしっかり描くためにヌード広告の描写、上野樹里扮する女の子を仕留めようとする上司の描写を練り込んだのは非常に上手かったと思う。

 とはいえ、あんなエンディングの伏線張りは凄くムズい。この作品で仕込まれる伏線はかなり露骨である。「鍵泥棒のメソッド」や「トランス」のようなさりげなさはなく、「どうぞ、これが伏線だよ」と言わんばかりの演出だった。しかし、この作品は伏線が重要ではない。陽だまりの彼女の正体をいち早く観客に見破ってもらい時めいてもらう作品なのだ。そう考えると、よくぞここまで原作崩壊せず描ききったなと監督に尊敬の心を抱くのである。