「ルールを曲げろ」:第26回東京国際映画祭にて

子離れコンプレックス

「ルールを曲げろ」:評価80

監督:ベーナム・ベーザディ 出演:アミル・ジャファリ、アシュカン・ハティビetc

 

 イラン人は静かに感情を押し殺して白熱討論する文化があるとベーザディ監督がティーチインで仰っていた。このイラン映画は、親と子の激論を描いたドラマである。子どもは大好きな演劇の主演に抜擢されて海外公演を間近に控えていた。しかし、娘のことが心配な父親は娘のパスポートを隠して海外公演させないようにしてしまう。そこでの彼女と父親、そして劇団員の熱い討論を描いている。

 「別離」もそうだが、イラン映画を観る限り、イラン人は日本のやくざ映画のように「殺すぞこんやろー」と罵声を浴びせることなく論理的に説得する。感情を押し殺して自我を保ちつつ、保守過ぎてびくともしない相手を説得する。こういう能力って必要だなと感じた。「運動靴と赤い金魚」や「友だちのうちはどこ?」に出てくる少年だって、日本の幼い子は自分の主張が通らないときに泣きわめき暴れるのに対して、つたない言葉を使って相手を説得しようとする。たとえ理不尽なことが起ころうとも。

 親だって意地悪でパスポートを隠している訳ではない。可愛い娘が低収入な道に陥ろうとする危機を救うために苦肉の策として行使しているのである。だから、説得で道は開けるはずなのだ。

 そして監督曰くこれは親世代から子世代へ襷を渡したい気持ちを映画に込めたと述べているため、ルールを曲げるために壁を壊せと画面からにじみ出ていた。私は数年前に早稲田松竹のティーチインイベントで故・若松孝二監督にインタビューしたことがある。彼は「今の若者はおとなしすぎる。こんだけ不条理なことが起きているのにただ服従しているだけでいいのか?疑問に思ったら行動に移せ」と仰っていた。「ルールを曲げろ」とは行動が大切なのだ。この作品の主人公もパスポートを返してもらうべく父親の会社に赴いた。まさに「若者は度胸」だ!

 とはいえ非常に難しいよね、この前TBSラジオを聴いたときに、「バブル世代で遊び人人生を知っている人が、大人になると子に対して夜遊び等を制限する」という話をしていた。親にとって子どもは宝物であり、そんな子どもが汚されることを心良く思わないから保守的になってしまうのであろう。私は高校3年生の時に一人旅を行ったが、その計画を親に語った当初親に全力で止められた。私も親になったら息子、特に娘が旅立とうとしたら止めてしまうのだろう。頭ごなしに制圧する親に私はなりたくない。論理的に子どもが説得したら認めてあげられるような親になりたいなと感じた。そして、この作品の父親のように感情的にキレるのを抑圧して平静を保てる人物になりたい。