「25万で欧州を放浪した高校生(仮)」

二日目 ONLY GHOSTS LEFT ALIVE

 東京ディズニーシーには「クリスタルスカルの王国」と呼ばれる呪いのスポットがある。クリスタルスカルの王国探索ツアーに参加した者は必ず呪われ、大きな岩にゴロンゴロンと追い回されてしまうのだ。聖地を迂闊に侵してはならない。
 そして、このことは夢物語ではなく実在する話である。何を隠そう、僕がこれからこれから語る話はまさに「呪われた話」である。今まで幽霊など微分も信じていなかった。電子数十個ぐらいの存在が僕を脅かすことができようか、いやないと思っていた僕をここまで絶望のどん底に陥れたのはある一つの罪だった。

 AM6:30

 時差の関係で一日が長くなり、体内時計はぐるぐるぽっぽーランチの鐘を鳴らす。第一ミッション、最初のホストファミリーとのランデヴーも無事成功し、AM8:00自分の白紙スケジュールと睨めっこする。どこに最初に行くか?エッフェル塔、ルーヴル美術館、本気出してヴェルサイユ宮殿?いや、僕はカタコンブだ。カタコンブとはダンフェール=ロシュロー駅から徒歩3分の所にある地下墓地である。キリスト教がフランス国内に伝来し、今までは郊外に死者を埋葬しに行ったのだが、教会の傍に埋葬することとなった。しかし都市化が進み、埋葬する場所に困り埋葬費も値上がりしてしまう。そこで教会は、裕福でない人々のために集団埋葬というスタイルで地下墓地を造ったのが始まりとされている。

 さて、初めてのフランスでアン・カルネ・シルヴープレ(回数券下さい)とメトロの受付に発動したことから僕の旅行の歯車は動き出した。フランス人って美人が多いのかと思いきや冷酷な人ばかりだと思い知らされたのである。冷たいお役所仕事さながらで、回数券と2.5ユーロが投げ出されカルチャーショックを受けた。この時、僕は知らなかった。これがフランスだったことに。

 さて、地下墓地あるダンフェール=ロシュロー駅に着き衝撃を受けた。10時オープンのはずなのに、カタコンブを、カタコンブがある公園をロックな民がとぐろを巻いて並んでいる。とぐろのお尻は穴から200m先である。AM9:30の驚愕ここにあり。さて、燦々と照り付ける太陽。フランスの夏は想像以上に熱い。怪しい水売りが高額で水を売りつけてくる。しかし、意地っ張りな僕はBボタン連打で我慢する。15分に10m行くか否かしか進まない徐行っぷりにフラストレーションが溜まっていく。さらに、不運は続く。公園を取り囲むとぐろをポリスが、「歩行の妨害になるから」と解体し始めたのだ。公園内部に誘導。抜かされないように列と列とを駆けなくてはならず、すでに疲れが出始めている僕の体から精神が毒されていった。「エッフェル塔に行っとけばよかった」と後悔すらまきおこった。坊ちゃんに匹敵する「無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている」僕はまたしても損したと思うしだいであります。

 待つこと映画一本分、干からびた私に朗報。受付でジュ・スィ・エトゥディオン作戦(私は学生ですと言いまくる戦法)を連呼したら半額ぐらいで入ることができ期待が高まる。この後5分後に訪れようとする恐怖も知らずに。さて読者は、このページに映るよからぬ写真について興味をお持ちでしょう。ここは撮影は許可されているが、フラッシュは禁止されている。しかし、周囲のロックな民はお構いなしにフラッシュ写真を撮る。フラッシュを使わねば事の次第を箱に収め難いからだ。僕は、ニコンのカメラのフラッシュ機能を使って、手持ちの人形をどくろに食べさせた状態で記念撮影をした。僕もロックな民だったのである。「この不届きものめ、俺の味わった苦しみをお主に与えよう。そして、絶望を与えるんだ」。カタコンブの亡霊は夕闇の底から這いあがる。彼らにとってカタコンブは庭だ。数キロある迷宮を高速に駆け抜ける。そして、僕の腹に怒りのナイフを突き刺す。「うぅ」。僕は腹に刺々しい苦痛を伴いよろめいた。「さっきまで元気だったのに...」。折角、90分も待ったのにトイレなど皆無な地下世界で、出口を求め彷徨する。しかし、幾度曲がれどもゴールの兆し一つとして見当たらない。同じような髑髏しか見えない。無限ループか...。髑髏の嘲笑を浴びつつ、腹を押さえ、僕は光を暗中模索した。彷徨すること20分。光を見つけた僕は喜びのあまり、近くにいたロックなアメリカ人に記念撮影を依頼して見事プリズンブレイクできた。気が付くと血だらけな腹の痛みは消滅していた。四谷怪談か!でも、本当に幽霊は存在していたのか。今日はこれ以上冒険すると「死」に直結しそうだったので、go to home帰路に向かうのでした。

 

 帰れない。

 コンブホンから10分くらいのところに我が帰る地があるはずなのに、行けども行けども帰れない。方向音痴とは自分の非に気づくまでが遅く、対処も鈍重だからレッテルが張られるものである。どうやら、僕は道を間違えたことに気づくまで非常に遅かったようだ。30分くらい歩いたところで引き返す。しかし、引き返す道も間違えてしまったため、たどり着いた駅はコンブホンではなく全く違った名前だ。場所を確認する。線路の右、左どちらを行けばいいのかわからない。人に道を尋ねる勇気も摩耗してしまい、その技を使うことができない。流石に孤独から半泣きになる僕、開始早々地獄を見る羽目になった僕はタンホイザーのごとく手持ちの地図を辿り辿り、軌道修正、30分で帰れるはずが2時間もかかってしまった。呪いは恐ろしい。私は懺悔をすると、ベッドに気絶してこの日は幕を閉じた。寝るにはあまりに早すぎるPM5時。でも、よくよく考えたら日本では午前1時。徹夜じゃん。時差って面白いな。