「25万で欧州を放浪した高校生(仮)」

十四日目 リアルアルゴ

 決戦当日。

 予行練習した通りガリエーニ(Gallieni)駅のバス乗り場に向かう。すると第一ミッション、「受付に行け」が待ち受けていた「B」「U」「P」のどれかが正解らしい。僕のイーチケットは良いチケットではない。窓口が書いていないのだ。ここはトラベラーソウル、KAMIKAZEだ。「B」に並んでみる。違うよと言われる。すかさず「どこですか」ときく。「U」ですよ、「はいそうですかメルシーボクー」「はいどうぞ」「かしこまりました」ゲットしたぜロンドンへのビエ(切符)。一安心した僕は、カフェでチョコレートクッキーとカフェを頼んでくつろぐ。やっぱロンドン行きはこれ聴かなきゃね「Unmei♪wa♪Endless!」。んっつ知らないって?教えよう。「Unmei♪wa♪Endless!」とは4人の女子高校生がゆとりバンドサークルでティータイムを愉しむ様子を観察するアニメの映画版で使用されたミュージックなのだ。映画版で彼女たちは卒業旅行の地としてロンドンを選択。飛行機とホテルだけ取ってくれる旅行スタイルでロンドンに行ったとさ、おしまい。

 そんな彼女らに挑戦状。僕はフランスから進撃だ。見てなさい我が手腕をっと中二病紛いなことを思っているともう搭乗時間。トランクは下に乗せて席でゆったりと座る。すると、僕の隣にエキゾチックな女性が座ってくるではないか。アフリカ系の女性だな。おっとテンション上がる僕であったが、その興奮は急旋回失速そして墜落する。おもむろに彼女は刺激臭のあるものを食べ始めた。どうやらチーズ味のスナックらしい。実は私、チーズは苦手である。グラタンやピッツァに使われているチーズは好きだが、お菓子に使われているチーズと固形のチーズの臭いがどうも苦手だ。僕の隣で苦手なものを食べている。それだけならまだましだが悪臭をまき散らしている。おまけに食ったゴミは放置プレイ。バスの揺れで僕のゾーンに進出してくる。ダラックマか!見れば見るほど堕落した熊にしか見えなくなった。

 

 車旅は面白い。電車に比べて変化が多いし、時折立ち止まるパーキングエリア、そこの空気を吸うのが好きだからだ。おもむろに現れたパーキングエリアで食糧調達。ベーシックなBLTサンドとやはりオランジーナ。ここに来て何本オランジーナ飲んだことか。好きなんですよオランジーナ。あっでも現在の私は来るべき旅行のための節約で88円の炭酸水しか買わないんですよ。ご褒美として高いジュース買う場合も、ユニークなもの好きの僕はオランジーナそっちのけでジャパニーズ・エキゾチック・クオリティなものを買います。あっつホット炭酸買わなきゃ。選択肢が少ない国だからオランジーナを愛用できたと言えよう。

 さて、バスに戻るとダラックマがサンドウィッチを貪っていた。エクスキューズモワと入れてもらう僕。ダラックマはもうどうでもいい。僕はマイワールドに引きこもりますとiPodを装着。今度はブエナ・ビスタ・ソチアル・クラブを聴くのでした。キューバには行かないが。

 ところで「アルゴ」って映画をご存知かな。そう、昨年度アカデミー賞作品賞を獲得した作品だ。そして、昨年自分の映画館で観た洋画ランキング1位を獲得した作品でもある。イランで革命が起き、イランのアメリカ大使館が革命家に襲撃される。気合で逃げた大使館員は別の大使館に身を潜めるがイランの革命家たちに潰されるのも時間の問題。そこでCIAはイランで架空のSF映画を作るフリをして彼らを救出しようという「実話物語」である。正直なんで1位にしてしまったのだろう。イラン人が観たらキレだすような挑発的作品である。しかし、実際に「アルゴ」の緊迫のラストを体験した僕はノスタルジーからその作品を1にしたっくなったのだ。「ローマでアモーレ」より「アルゴ」だったのだ。さて、事件の概要は以下の通りだ。

 

 PM2:00

 バスはだだっ広い高速道路で立ち止まる。客は降りて建物へ入れと言われる。建物に入るとパスポート検査の人が暇そうに待っていた。子連れの客の子供に笑顔を振りまく審査員。そして最強ジャパニーズパスポート。あっさり通してもらえた。入国審査って楽だなと思った僕が馬鹿だったことに気づかされる。

 再びバスに乗って5分後、またもや降ろされる。そして謎の紙を配られる。それが何を示しているのかわかるまで10分を要した。どうやら本格的入国審査カードだ。英検二級を苦し紛れに獲った僕故に、入国用語を辞書で調べなくてはいけない。事前準備しててよかった。しかし、昔から詰めが甘いのも僕である。「滞在日数」「滞在先の連絡先」やっべ、それ書いた紙、バスの荷台の中じゃん。そんなこともあろうかと僕の頭の消しゴムが消さないでおいた次なるホストファミリーのgmailアドレスを記入。滞在日数は分からないから適当に説明しようと並ぶ。すると係員が不安げな顔で「あんたはこっち」と案内する。どうやら問題児たちの審問場である。戦闘のメキシコ系の人が揉めている。あれっ目の前の人日本人じゃねと思いきや韓国人だ。目つき悪いから気を紛らわす会話もできない。待つこと30分。ようやく入国審査。アメリカに行ったとき以来の本格的尋問だ。

審査員:どこに滞在するのだ?

僕:友人

審査員:何日滞在するのだ?

僕:2泊(後に気づいた、それが正解だったことに)

審査員:目的は何だ?

僕:I'll meet my friend, and trip many countries.

  (友達と会って多くの国を旅するのだ)

審査員:滞在先は?

僕:滞在先?ホテルだ。

審査員:どこの?

僕:それは友達が知っているのでわかりません

 審査員はじっと僕顔を見て、パスポートと見比べることもせず、「いいよ通れ」と言ってくれた。日本人は安心安全らしい。イタリアツアーで遭遇した入国審査だって目の前のアラブ系の人は事細かく質問されているのに、「日本人は通っていいぞ」と30人ぐらいが顔パスで通過できたのだ。またアメリカとイギリス以外は特に質問されることなく、通過できた。故にここまで緊迫した面接は初めてだ。高校一年生の情報の授業で実施された圧迫面接より怖く、生死の危機すら感じた局面でした。そう、イギリスはユーロ加盟してなかったしね。少し考えれば入国審査あったことも分かったはずなのに、そこの段取りを予期できなかった僕は馬鹿でした。でも無事入国できたから、まさに「アルゴ」のCIA局員並にほっとするのでした。

 ほっとしたのも束の間、僕の乗るバスは謎のコンテナに収容されてしまった。これはなんだ?そう、これは英仏海峡トンネルに入るための準備だったのだ。ドーヴァー海峡を結ぶこのトンネルは列車専用道なので車はシャトルに乗らなきゃいけないのであります。バスはトンネルに入ると、前方後方からシャッターが降りてるではないか。万が一のことも考え、一定区間でシャッターが降りる仕組みだそうだ。なるほど。そして、監禁されること30分。イギリスに無事着きました。嬉しいのだが、入口と出口があまりにも似ていたため、「まさかフランスに引き返した?」と疑問に思ってしまった。

 そんな、僕の不安を消し去ってくれたのは、イギリスっぽいバスだ。ロンドン市内に近づくに従って、お馴染みの2階建てロンドンバスもお見えする。しかし、ロンドンバス内輪差が多すぎるため渋滞の元凶。しかも、ロンドンオリンピックの最中故に首都高並の渋滞が待ち受ける。ロンドンバス邪魔過ぎだ。内輪差は侮れないのだ。

 さて、5時間のバス旅も終えロンドンに降り立つ僕。問題はそこからだ。ホストファミリーのエヌさんと合流しなければならないのだ。バスの中でミュージック聴きながら「おばあちゃんが跳ぶ」というくだらないゲームに熱中していたため、マイiPodの電池量が危機だ。またしても後悔なり。Wi-Fiは通っていたため、gmailでやりとり。実はこのバスステーション、ゴミゴミしていたため待ち合わせするにはハチ公広場級の難易度があったのだ。そして、どうやらエムさん一家も渋滞に巻き込まれているらしい。周りで再開を喜ぶ民がいる真ん中で人を待つのは心苦しい。でも自分の経験上、下手に異動するとミイラ取りがミイラになる。非常に危険だ。鳴くまで待とうホトトギス。待つこと30分。「K君(僕の名前)、久しぶり」と聞き覚えのある日本語が。出会えました。エヌさんとは小学校2年生ぐらいからの知り合い。塾の先生で彼女のおかげで弱冠小6にして漢検2級取得。英検2級までの旅路も支援してくれたのだ。恩人である。そんな彼女は僕が高校1年生の時に父親の転勤でドイツに移り住むことになり、長らく会っていなかった。そんな彼女との再会。息子たちも3年で僕の記憶にない姿へと進化していた。懐かしい。そして嬉しい再会を果たしたのであった。

 おおっ、エヌさんの車の車窓から見えるロンドン風景に感銘を受ける。優しい色合いだ。平和だ。ふと、疑問に思う。あれっオリンピックなのに喧騒とした雰囲気0だぞ。一応、オリンピックは行われているらしい。それを確認したのはホテルでのこと。なでしこジャパンがフランスと戦っている様子が放送されていた。ゴールキーパーの福元美穂が強い。イナズマイレブン級の華麗なる鉄壁を魅せる。そしてチームとしての技術向上も画面からにじみ出てくる。実は昨年アメリカに短期留学した際、テレビでなでしこジャパンがアメリカと戦っているのをホストファミリーと一緒に観た。明らかに守備の試合をしていて、パス回しは上手いが攻めが弱いな。でもディフェンスは強いといった感じでした。そんな弱腰サッカーなのに奇跡的に日本が勝利したのには驚きだ。ホストファミリーは親日家だったためか、一緒に抱き合って喜んだ記憶がある。

 そしてまたしても海外から応援する僕。集団競技は昔から嫌いだが、ここまで熱中するとは思わなかった。何度も失点の危機に陥るなでしこジャパン。澤穂希かっけー。そして1対2で勝利する日本。あれは感動したね。僕の家族は皆スポーツに興味ないため、スポーツ中継で盛り上がることはないのだが今回のホストファミリーは熱い。だから、興奮は一晩中さめなかった。僕の旅も面白い後半戦になりそうだ。