「25万で欧州を放浪した高校生(仮)」

二十一日目 ワーゲンの街

 エヌさんの家はフォルクスワーゲンの工場の近くにある。そして、その工場の隣にはフォルクスワーゲン博物館「アウトシュタット」がある。今回の目的は、その博物館のミュージアムショップでワーゲンのミニバスミニカーを買うことである。実際、正直これがあるヴォルクスブルクには、これしかない。故にツアーではなかなか行けないところである。さて、今回は一人で博物館前までエヌさんが連れて行ってくれて見物は一人で行うため、ドイツ語を使うチャンスだ。「イッヒ・ビン・スチューデンティン」、フランスでも使った「私は学生です」作戦を敢行しようと思ったら、流暢な英語で対応されてしまった。どうやら、ドイツ人のトーク術として日本人には自動的に英語で話してくれる仕組みらしい。背の高い女性スタッフに入り口を教えてもらう。どうもドイツ人女性は怖いな。優しいのだが、背が高く真面目な風貌。まるで女性もジェームズ・ボンドだ。そこから漂う威圧感は僕の体に重いGを与えた。やはり、僕はデンマーク女子派である。

 さて「アウトシュタット」では、ワーゲン車ができるまでを様々なアクティビティで教えている。実際にパズルのように部品をつなぎ合わせて僕もワーゲン車を作った。そして、ディスプレイをいじくって車のデザインを制作してプリントアウトした。やっぱり赤い車が好きだ。ミニバス乗るとしたらやっぱり赤と白ベースのものが最高にクールだ。吉祥寺によく駐車している青のミニバスでもいいけれど、やっぱり赤だな。でもミニカーは吉祥寺スタイル、青のミニバスにしよう。

 ところで、この手のテーマパークにはシュールな映像を使ったアトラクションがある。シンガポールで行った遊園地にある映像アトラクションは、某海賊映画のパロディをするも不完全燃焼気味なしょぼい3Dもので、つまらなかったけれど強烈に記憶に残った。そういえば豊洲にある「がすてなーに」では、クイズアクティビティがあったな。

 では「アウトシュタット」では❓

 説明しよう。ここでは本当にフォルクスワーゲンと何が関係あるのか分からん映像施設があった。プラネタリウムのようなドーム状の施設に誘われる。映像が始まると、時季外れのクリスマスチックな雰囲気醸し出す場面が映し出される。少年とおじさんによるベッドタイムストーリーものらしい。民族や自然が映し出され、前半の伏線らしき描写も回収されずいつの間にか幕を閉じていた。難解だ。やはり、自然を大切にと言ったことがメッセージなのだろうか?

 さて、腑に落ちぬまま出口に来てしまう。もう終わりかと思いきや、左手に回転扉が勝手にくるくる回転しまくっている。僕の心の奥底から突如、陸人の魂が湧き出てくる。クラウチングスタートのポーズをとる。気分は運動会。先生がピストルを空に向ける。先生の腕がチャリンコの回転運動みたいな等速度で、降下する。僕は目を閉じる。爆音と静寂の刹那な空間を僕は愉しむ。あと一秒。そう予想して、僕の足は浮遊感を持たせる。バン、心の銃声は鳴り、僕は回転扉に飛び込....「ヘイ、ストップ」後ろから怒声が。振り返ると、50m先にいる長身のドイツお姉さんが怒っていた。どうやら、入り口でもらったチケットをSUICAのようにタッチでゴーしないといけないのだ。「すみません...」と軽く会釈して、タッチでゴー。静かに外の世界へとワープした。

 工場って汚いイメージがあるためだろうか、工場の周りは不自然なほどに自然自然している。工場の近くにいるにも関わらず皇居さながら清々しい空気が流れているのだ。

 ありました。ミュージアムショップ。もちろん、買いました青いミニバス。赤いミニバスは知り合いへのプレゼントに買った。僕も元々コレクター魂を持ち合わせていて、幼少期はガラクタやペットボトルキャップを集めていた。ここに来て、ミニカーを集めるのも面白そうだなと思った。しかし金がかかりそうだから、大人買いすることを躊躇し、青バスだけにとどめておいた。ところで、フランス人の勘定の仕方とドイツ人の勘定の仕方には差異がある。フランス人はいつか話したが、細かい硬貨を使って支払うことに難儀するのだが、ドイツ人は教えてくれるほどウェルカムだ。26.49€の買い物をしたところ、店員が49セントないかと尋ねてきた。しかし、間が悪いのが僕の特徴。あんなにフランス時代に硬貨で支払おうとして怒られたのに、いざ使うときになって数セント足りなかったのだ。申し訳ないおじさんと10ユーロ札3枚で支払った。

 そんなこんなで、ふと土産屋を出て上を見上げると、クラッシックな車がずらり。こんな、狭い空間にどうやって運搬したんだろうと思わせるほど沢山の車が並んでいた。フォルクスワーゲン社開発の歴代の車たちだ。馬車のような車から近代的な車まである。東京モーターショーみたいなところに行ったことがなかったので驚きだった。ここには、他にも立体駐車場があって、ミニカーを運ぶようにアームが忙しく動く。やっぱり、来て良かった。僕が将来乗りたい車ナンバーワンのワーゲン車の本拠地でこれほどまでに遊びつくせたとは。そんな満足げな僕であったが、一つ残念だったことがある。それはワーゲンブランドの革ジャンを買えなかったことだ。何たって2万円もするのだ。バイトもしていない当時の僕からしたら、こんな高級品流石に買えない。クールな代物だが、諦めざる終えなかった。

 次回ヴォルクスブルクに行ったら、革ジャンを買わなくては!