2013年 外映画ベストテン発表

邦画部門

第一位:「横道世之介」

 やはり愛校心からでしょうか、法政に通う者としてぐっと来る青春ラブストーリーでした。160分近い作品で、鑑賞前は「邦画お約束の竜頭蛇尾パターンかな」と不安でしたが、
 高良健吾の初々しいフレッシュマンから大人の階段を登っていく成長っぷり、そして吉高由里子の可愛さに夢中になり長さを感じさせませんでした。

 また、原作は「パレード」「悪人」の吉田修一なのでこんな恋愛ものでも変化球を含ませてくる。通常、恋愛ものは浮き沈みを通して愛を深め合っていくのに、この作品は上りっぱなし。その予定調和を外した先にかます結末があまりに斬新。そんな原作をそのまま踏襲せず、映画ならではの手法で演出しきっていたので、ラブストーリーとしても原作ものとしてもハイクオリティの逸品と言えよう。最後まで「地獄でなぜ悪い」と迷ったが、まとめ方の巧さでこの作品を栄冠に選びました。

 

第二位:「地獄でなぜ悪い」

 園子温が「キル・ビル」を撮ると、やはりタランティーノに負けず凄まじい作品ができあがる。そして毎度恒例のインパクトのあるタイトル。英題である「Why Don't You Play in Hell」は私の座右の銘にもなりました。

 閑話休題、園子温が自伝の切れ端を巧みに組み合わせて作ったヤクザ・コメディ映画。「愛のむきだし」同様、沢山の登場人物を目まぐるしいスピードで展開していく「カラマーゾフの兄弟」スタイルでヤクザの仁義なき戦いとクレイジーなフィルムメーカーたちと巻き込まれた一般人というあり得ない人物構成をねじ込んでいく激しい映画作りに映画オタクである私が夢中にならない訳がない。

 「キル・ビル」のように、様々な映画のオマージュを叩き入れ、尚且つ爆笑まで提供する遊び心ある展開に涙が出るぐらい楽しませて頂きました。

 二階堂ふみや國村隼扮する危ない人たちの集いに紛れ込む星野源のオドオドした演技には感動だ。星野源の演技に賞を与えたいぐらいである。

 しかし、残念だったのは「愛のむきだし」に比べると若干失速したことだ。中盤のぐだりこそ、ラスト30分にも及ぶチャンバラシーンで相殺させてはいるものの、園子温映画の勢いが好きな僕にとって少し残念でした。

 

第三位:「そして父になる」
 まさかの今まで育てて来た子どもが他人の子どもだったという最悪のシチュエーションを乗り越えていく二組の家族の奮闘ドラマ。

 正直、イスラエルとパキスタン間での上記のようなシチュエーションを描いた

「もうひとりの息子」を観てしまうと深刻さが低いので評価し辛くなってしまったのだが、やはり是枝監督の映像術に惚れ込んでそこを評価することにした。

 特に私が好きな映像術として、福山雅治扮する硬派な家庭とリリー・フランキー扮するチャラい家庭との初めてのフードコート食事会のシーン。

 福山が、自分の本当の息子がどういった子なのか確かめようとテーブルをちらり。本当の息子はジュースをストローを噛みながら汚く飲んでいる。福山の苦い顔を挟んで、再びその息子にカメラを当てる。段々カメラが移動して、リリー・フランキーがジュースを飲んでいるところにフォーカスが合わさり、なんと彼もストローを噛みながら飲んでいる事実を知る。この「本当は子どもの取り違えがなかったんじゃないのか」という気持ちから発生する、間違い探しの描写が非常に繊細で好きだ。他にも電車の影を使った母親の葛藤表現や、ギターを使った遊びのシーンなど映像をたまに作っている私にとってインスピレーション湧く描写が多く良い勉強になった。そして、私がもしこの立場になったらどうするんだろうと考えさせられた作品でもあった。

 

第四位:「中学生円山」
 今年は連続ドラマ「あまちゃん」で流行語大賞もゲットするほど快調なクドカン。その勢いは映画でも発揮される。彼の脚本した「謝罪の王様」も面白かったが、それに勝る作品が「中学生円山」である。なんと作中7割近くが下ネタ。逆に下ネタをこの作品から取ったら、何も残らなくなるほど下ネタ全開の作品である。しかも、従来のクドカンkが脚本、あるいは監督担当した作品はどれも竜頭蛇尾に陥るのだが、この作品に至っては突っ切るまま。中二病発症中の少年がとあるエッチな目標を叶えるための努力活動と近くに住む草薙剛扮する怪しいシングルファーザーに対する妄想活動が暴走しまくっていて、映画館内の他の客が失笑しているのに対し笑いをこらえるのが必死なほど爆笑でした。それにしても、草薙剛の演技が狂気過ぎて怖い。確かに、あんなゲイゲイしいフェロモンを放ち、自分の性癖を見破る台詞を放つ住人と出会ったら妄想するな、僕も。この記事を書いているうちに、また観たくなったぞ。

 

第五位:「みなさん、さようなら」

 これまた団地映画、今年は団地映画がブームらしい。「クロユリ団地」を未観なのは痛いところだが、この団地映画もハイクオリティである。

 団地にはスーパーや学校なんでも揃っているから、一生団地で過ごそうと考えた少年が団地生活を貫き通す半生を描いた作品。単に、自宅警備員で外との繋がりを嫌がる保守的な人の生涯を描いているのかなと思ったら違った。どんどん友人は団地から旅立ち、団地も寂れていくのにそこまで団地生活に執着するのか、その謎が解けたときに見えてくる気づかなかった伏線の数々に驚かされた。そして、段々寂れていく団地、移民が住み着きスラム化する団地の平和を守ろうと必死に努力する主人公に心の琴線が触れました。私も幼少期、団地に住んでいただけにノスタルジーすら感じました。

 

第六位:「デッド寿司」
 「ロボゲイシャ」や「片腕マシンガール」といった、外国人受けするジャパニーズカルチャー紹介ムービーを作り続けるB級映画界の巨匠井口昇監督が生み出した化け物映画。スシが大量に襲ってくる。しかも、襲われた人がゾンビ化する。スシがスシと交尾して大量のスシクリーチャーが生まれる、女体盛りといったありとあらゆる間違った日本を紹介していく監督の遊び心に感動した。しかも、きちんとスシ職人になるまでの道のりは解説するところがこれまた面白い。日本のサブカルチャーを面白おかしく紹介するならこの作品。フランス留学して、日本文化を教える機会があったららこの映画を一緒に観るとしよう。芸術活動を楽しんでしていることが滲み出るように分かり、僕も見習わないといけないなと痛感した逸品である。

 

第七位:「草原の椅子」

 「八日目の蝉」の成島出監督作。ん~この作品の良さを言葉表現するのは非常に難しい。説明するとしたら、古き良き日本映画の地味だけれど味のあるドラマを見事に再現した作品と言えよう。ひょこんなことから、虐待されている子どもを預かり、そしてそのまま養子として育てることになった夫婦が、物語の末にパキスタンのフンザに行くと言う話。何「フンザ」ってと思う人もいるであろう。実はフンザは旅人の間で知る人ぞ知る絶景スポットで、「風の谷のナウシカ」の舞台とも言われている。一度行くともう一度行きたくなる場所だと私の持っている「A GUIDE TO THE WORLD」著者は語っていた。

 さて、地味なストーリー、最終目的地もマニアックすぎるのだが映像全体から滲み出てくる魂。虐待されている子どもを酷い親から守りたいという熱がガンガン伝わり、そしてフンザで出会う坊さんの呪文で泣けた。

 旅行好き、異国で魂を洗われること欲する僕にとって十分満足できた作品と言えよう。

 

第八位:「劇場版魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」

 やはり、まどマギは凄まじかった。ただでさえ、海外アニメに比べ凝った映像やストーリーを提供する日本アニメ界なのに、その次元をまどマギは越えていた。昨年、[前編]を外映画部門第二位に持ってきた私。正直心配であった。「ファウスト」をモチーフに、一時の欲が永遠の不幸を呼ぶ演出、手書きっぽさとアニメっぽいタッチ、ヤン・シュヴァンクマイエルっぽいタッチを組み合わせた巧みな演出で描く前編。「ツァラトゥストラはかく語りき」要素を付け加えた壮絶な後編。
 びっくり結末を迎えた後編の次に何があるのか?それは新たなミステリーである。何故か、消滅したはずの平穏な生活が復活。しかも、魔女はまどかの願いによって消滅したはずなのに、友達はナイトメアという新たな敵と戦っている。この世界は何か?黒幕は誰か?事の一部始終を知っている、ほむらの目線から犯人を捜していく話に観客である私ものめり込む。「前編」「後編」の出来事を思い出しながら怪しい世界のほころびを見つける作業が溜まらなく面白かった。そう、この話では「オイディプス王」あるいは「夜の来訪者」のようなミステリー構造をとっているのである。これ以上言ってはネタバレになるので、映像面に話を移すが、映像ならではの表現法がここでも炸裂していた。さやかやほむらの描写を変えずに、周りの人の描写を歪めて描き、尚且つ彼女らの行動を変えずに、不気味な群衆を普通の人々を見るかのように動かす手法である。架空世界に居ることは観客も魔法少女も知っているのだけれど、その架空世界観を壊した世界を見られているのは観客だけという面白い見せ方でした。変身シーンも斬新だったのもあり、カオスで非常に楽しめる作品だったと言えよう。

 

第九位:「凶悪」

 韓国ヴァイオレンス映画かと思うほど鬼畜。そして、ストーリーの組み方がテクニカルな逸品。「冷たい熱帯魚」をしのぐシーンが非常にトラウマになった。人体解体した後に、悪人が「肉食いたいっすね」とぼそっつ言い、人体が焼却炉で燃えているシーンからのクリスマスパーティで肉を食べるシーンは本当にえぐかった。

 ジャーナリスト目線のシーンと「先生」と呼ばれる殺人事件の首謀者目線のシーンからの移り、例えばジャーナリストが家の窓を覗くシーンとその家の中で「先生」が人を絞め殺すシーンの移りが良かった。

 それにしても、「そして父になる」で暢気で優しいおじさんを演じたリリー・フランキーがこんなクレイジーな役をやるなんて、演技が上手いのは前々から知っていたが衝撃でした。「凶悪」の監督、白石和彌の映画はチェックしておこう。今後、覚醒するかもしれないぞ。

 

第十位:「東京家族」

 日本が誇る最強の映画「東京物語」をリメイクしようなんて無茶だ。確かに今年は小津安二郎生誕110周年、没後50周年という記念年ではあるが、小津ショットを真似ただけでは「椿三十郎」や「隠し砦の三悪人」の二の舞になってしまう。

 しかし、流石は山田洋次。小津への礼儀を怠ることはなかった。「東京物語」の家族は、皆おじいちゃん・おばあちゃんを邪険に扱っていたのに対し、この作品では皆協力態勢だ。しかし時代の変化により、息子たちは様々な業務に追われ、祖父母を思いやる気持ちはあるものの邪険に扱ってしまう。この立場の逆転を図り、同じ結末に持ってくる手法はお見事と拍手喝采者である。しかも、小津ショットの使い方も当然上手い。全然気づかないのだ。山田洋次博物館でようやくオマージュが分かった。小津ショットを山田ショットに変える。芸術は模倣するのではなく、盗むものだなと感じた。