2013年 外映画ベストテン発表

洋画部門

第一位:「パッション」

 デ・パルマのヒッチコックへの愛が全力全開された作品。意地悪な女上司とその上司に立ち向かう女社員の仁義なき戦いが描かれ、まさに女版「半沢直樹」と言えよう。

 しかし、デ・パルマ映画だから言論知的に戦う「半沢直樹」とは訳が違う。完全にいじめである。パーティーで女部下のキレた行動の動画を周りの社員に見せびらかしたり、セクハラをでっち上げたりしようとする。そんな凄惨な最中、その上司は暗殺される。明らかに部下が絡んでいると思われるのだが、2画面ショットまでを使ったアリバイにすっかり信じ込まれ、再びどんでん返しにあって謎が解けたと思いきやまたどんでん返し。登場人物が少ないだけに解けそうで騙されるトラップに引っかかるのが非常に楽しかった。そして、日頃の鬱憤を晴らすには良い作品でした。それにしても、見えているものだけが正しいとは限らない手法は、なかなか使うのが難しい。こういう高度なテクニックを僕の映像作りにも活かしたいな。

 

第二位:「わたしはロランス」

 バイト先のチラシ倉庫にあった、こののチラシを見た時から芸術性の高さを痛感させられたが、観てさらにびっくり。これは映画じゃない。ファッションショーだと。突如性同一性障害を告白し、一組のカップルの絆にヒビが入る。しかし彼氏を支援することに決めた彼女は、心の支えになり彼を学校の教壇に「女性」として立たせることに成功する。しかし、やはり性同一性障害と付き合うのは非常に厳しい、愛のドッジボールで互いに傷つけあい、傷つく日々。その壮絶な愛を、オシャレな曲とビジュアルで綴りきったグザヴィエ・ドラン何者?調べると19歳でカンヌ映画祭にて賞を獲っているではないか。この映画に感動泣きすると共に、若くして芸術性を発揮し映画の概念すら破壊しようとしたグザヴィエ・ドランに俺も負けてはいられん、大学内の有名人にまずならなくてはと闘争心を燃やした作品でした。フランスから、彼のDVD-BOXも取り寄せたことだし、彼からアイデアを奪うぞ。

 

第三位:「危険なプロット」

 フランソワ・オゾンは「Ricky」や「8人の女たち」と言った奇抜な作品を作っているが、この作品もかなり奇抜だ。文学の先生が面白い作文を書く生徒に惚れ込み、スキャンダラスな日常を書かせる。欲望とモラルをテーマとしたこの作品。観ているこっちも、生徒の小説の続きが知りたくなるようなスリリングな展開に興奮させられた。だって、生徒が友人の家の母親と結ばれようとする小説スリリングでしょ。人は小説や映画に自分が体験できない興奮を求めるが、まさにこれはその欲望を現実とリンクさせてみた恐ろしいテーマ。先を知りたい。でもこれ以上書かせたら現実世界に悲劇がもたらされてしまうのでは?でも読みたい。というチキンゲーム。欲を押さえきれなくなったときの暴走具合に恐怖と滑稽さを覚える作品でした。読書家が観ると、本の小ネタもクイズ大会みたいでもっと楽しめる作品であろう。まさに、私がそうであった。

 

第四位:「華麗なるギャッツビー」

 私が今まで読んだ小説の中で一番愛している「グレート・ギャッツビー」。それの映画化だなんて、評価はどうしても厳しくなってしまう。しかし、その厳しい目線をかいくぐるレベルの高さに驚愕する。小説の細かい描写隅々まで描くと共に、現代人にも当時のバブルで浮かれていたアメリカ人の気持ちとシンクロできるよう、ラップや今風のポップをBGMに使う斬新さで古典文学の世界に観客を引き込むことに成功している。そして、ギャッツビーを演じたディカプリオが似合いすぎてこれまたテンションが上がる。何よりも、この映画を今作られる意味があるなと感じた。他人に奪われた愛する人を取り戻すために、本当は貧しい身分なんだけれど、上流階級のマナーを完璧に覚え、裏では悪い取引で儲けつつ、ターゲットの女性を狙う様子が、今の就職活動と似ている気がした。タキシード一つで人格を表す。影なる人脈形成でなし上がる。自分で勝負するのではなく、金箔を塗った自分で勝負する。これって恐ろしいなと思った。そういう自分も金箔塗りをしているからなおさら怖い。

 

第五位:「嘆きのピエタ」

 キム・ギドク映画を初めて観た。やはり韓国ヴァイオレンスは恐ろしい。そして質が高い。借金取りの男の冷酷な顔が、突如出現する母親と名乗る女性の献身的対応で徐々に明るさを取り戻すのだが、その女性の正体を知ったときのショックは計り知れない。哀しい。ちなみに、この作品。直接的にヴァイオレンスを魅せているわけじゃないんだけれど、魅せかたが狂気だ。腕が切られる直前の描写を魅せつけることで、観客にその後の惨劇を連想させる。観客が本当のヴァイオレンスシーンを作るのだ。怖かった。そして切なかった。ギドク映画をもっと観たくなった。

 

第六位:「ハンナ・アーレント」

 教育学の本に稀に出現する、哲学者ハンナ・アーレント最大の攻防活動を描いた骨太ドラマ。序盤ハンナ・アーレントのヘヴィー・スモーカーっぷりとKYっぷりに突っ込みを入れたくなるが、彼女が唱える難解な理論「悪の凡庸さ」を世間に伝えるべく奮闘する様子に熱くなった。そして、人が心の奥に持つ差別の気持ちが如何に真実を歪めているのか、また組織の上司に命令され、自らの思考を停止し、罪を犯してしまう「悪の凡庸さ」の恐ろしさにについて深く考えさせられた。こういった、異端の論を出しても大学生はついてくる。大学生って考えが柔軟だからいいなと感じた逸品。

 

第七位:「タイピスト!」

 オードリー・ヘップバーンの時代を思わせるヴィンテージ系スポ根映画。

スポ根と言いつつも、タイピングだが。二本指使いから、10本指ブラインドタイピストへと進化を遂げ、華麗にタイプ裁きを魅せるデボラ・フランソワのセクシーさに時めいた。色使いが「シェルブールの雨傘」を思わせるものがあり、とてもオシャレである。オーソドックスだけれど、僕はこの映画が好きだ。デボラ・フランソワという女優に惚れた作品でした。

 

第八位:「汚れなき祈り」
 「尼僧ヨアンナ」を彷彿する狂気の尼さんが登場。

孤児院から追い出された二人の女の子。一人は修道院に入り、信仰に目覚める。もう一人はドイツでの重労働に耐えきれず、心の支えである彼女に会いに修道院のあるルーマニアに来る。そこでの宗教対立。そして医療問題の発生。ドイツからやってきたその女はこの修道院の信仰を全く信じておらず、しかも発狂。国籍はドイツにあるため、ルーマニアの病院に連絡してもすぐ追い返される。このままでは、修道院の存続にも関わる上に、下手に追放しては信頼をも失ってしまうので独自の荒療法で治すしかない。一方、その問題児の親友は「力」ではなく「情」で治そうとするが上手くいかない。この複雑なジレンマを重厚に描いた作品がこれである。この作品の監督、クリスチャン・ムンジウ監督の「4ヶ月、3週と2日」を予習なしに観て失敗した経験を活かして、ちゃんとヨーロッパ移民史を少しかじっただけに良い思考勉強ができた作品でした。それにしても、カンヌ映画祭で女優賞を獲ったコスミナ・ストラタンとクリスティーナ・フルトゥルの演技は凄まじい。狂気の演技でした。

 

第九位:「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」

 私が最も愛する外国人映画監督のジム・ジャームッシュ最新作。イカすぜ!芸術家はジミ・ヘンドリックスやウィリアム・バロウズのように、モロッコにインスピレーションを抱くようだが、ジム・ジャームッシュもモロッコからパワーを頂いたらしい。カルカベやウードを使ったモロッコ風ロック(グワナロック)に興奮。そして、何よりも素敵なのはこの映画がヴァンパイア映画だってことよ。デトロイトでロックミュージシャンをしている吸血鬼ののアダムの元に、モロッコに住むイヴがやってきて久しぶりの再会を喜んでいたら、危ない妹エヴァの出現でぶちこわされる退廃と崩壊の日々を、またしても格好良く演出してくれた。汚れた血は吸わないプライドから、病院で作られた血をわざわざ買うところや、血液アイスキャンディーを食べるところ、そして人間をゾンビとカテゴライズするところなどジャームッシュお得意のゆる~いギャグも炸裂していて快感の2時間を楽しみました。パンフレットもクールなので買おうか現在迷い中。そして、ティルダ・スウィントンの優しいけどお茶目なお姉さんっぷりに惚れた。「オルランド」が観たくなったぞ。

 

第十位:「25年目の弦楽四重奏」
 人生の不調と、弦楽四重奏の不協和音を掛け合わせるという面白い組み合わせ。

バイト先でお客様に猛烈に薦められて観に行ってびっくり。やはり、フィリップ・シーモア・ホフマンはキーマン。不協和音の原因を作った男だった。

 そんな彼が生み出しボロボロになっていく弦楽四重奏。

 ラストで、クリストファー・ウォーケンが魅せる引退のシーンでこの不協和音に満ちあふれた弦楽四重奏が覚醒し完璧なものになる描写は圧巻でした。