2013年 家映画ベストテン発表

洋画部門

第一位:「ベニスに死す」

 学生は初見でこの作品を観るとき、エロい連想を浮かべながら観る。私が中学3年生の時に観たときにはそうだった。また、イタリア旅行に行ったときとある学生が「エロいイメージで観たらつまらなかった」と語っている。しかし、トーマス・マンの原作を読んできちんと予習してから観ると話は違ってくる。原作の9割はおじさんの妄想で構成される。おじさんの浜辺でフォーリンラヴしてしまった青年への妄想を顔芸と美しいベニスの映像だけで表現したヴィスコンティは凄かった。もちろん、顔芸のテクニシャンであったダーク・ボガードの演技も素敵だ。そして、マーラーの交響曲第5番によるフィニッシュはこの作品を最高のものにした。「○ニスに死す」なんか言ってごめんヴィスコンティ。

 

第二位:「未来を生きる君たちへ」
 大学に入って「北欧研究会」に所属し、北欧映画を研究している僕が出会ったすんげーデンマーク映画。いじめられっこが用心棒を雇って復讐する話と、貧困地区で過激派との戦いに巻き込まれる医師との悲劇。デンマークは平和な国だが、映画はどの監督が撮っても悲惨な映画が生まれる。しかし、悲惨さに奥深さを含ませるのもデンマーク映画の特徴だ。この映画の少年の復讐劇に熱くなった。実は小学校時代、いじめっこにいじめられ、先生を介して和解の儀式が行われたが、私はそいつを許そうとはしなかった。何故なら、その場限りの和睦に過ぎないからだ。それを分かっているかのように、和平交渉を決裂させる用心棒はクールだなと思った。

 

第三位:「処女の泉」

 黒澤明の「羅生門」に影響を受けてオマージュしたベルイマンの作品。「羅生門」の凄いところは、原作が「藪の中」という芥川龍之介の別の作品なのだが、インパクトを与えるために、「羅生門」の要素を取り込み、観客の注目を一気に集めた上でミステリーを展開しているところだ。それを、単純化しミステリー要素をなくし、さらに羅生門のような強力なインパクト要素をなくしてここまで惹きつけるベルイマンのテクニックに感動。そして、そんな彼を支えたのが撮影者のスヴェン・ニクヴィスト。彼の撮る木と格闘するシーンは本当にクールだった。

 

第四位:「バニシング・ポイント」

 タランティーノが「デス・プルーフ」で熱くこの映画の良さを演出していた。「イージー・ライダー」と並ぶアメリカン・ニューシネマの代表作にまたしても熱狂した。ポリスに追われながらも賭のためにひたすらに疾走する男、その男を支える黒人DJの電波を越えた友情。妨害でラジオ局も被害に遭いながらも必死に敵の情報を伝えようとするDJの姿はまさにロッキーだ。曲もクールである。

 

第五位:「汚れなき悪戯」

 アニメや漫画、童話の世界ではよく、少年が拾った動物をこっそり育てる描写がある。なんとこの映画の少年マルセリーノはキリストを育てるのだ。桃太郎の如く修道士に拾われたマルセリーノは修道院で暮らすようになる。マルセリーノは悪戯っこで、遊び友達もいないから修道士も困っていた。そんな最中、マルセリーノが修道院の屋根裏でイエスの十字架像を見つける。その十字架像に哀れみを持った彼は、毎日パンを持ってお供えして、お話相手にしていたら遂に十字架が話し始めるというびっくりな話。しかも結末が余りに衝撃過ぎて笑いと唖然が同時にやってきた。少年のコミカルな悪戯をユニークな形でだめ出しする意外な傑作でした。

 

第六位:「春のソナタ」

 だいぶ、ヌーヴェル・ヴァーグの面白さが分かってきた今年だがそんな中でも「春のソナタ」は大傑作である。哲学教師の家に転がりこんだ女が、自分の父親を嫌いな愛人から突き放すべくその哲学教師と結ばせようという話。ヌーヴェル・ヴァーグのリアリズムが反映され、哲学の話や私事の話をかいくぐって女同士の権力構造、策略を観ると楽しめる。「緑の光線」もそうだが、余計な話を軽く流して観る。ある一つの家族を観察する心構えを持つことで、その家庭が持つスキャンダルをこっそりと楽しむことができよう。哲学教師の家に転がりこんだ女の肉食っぷり、それを哲学者ならではの冷静さで対処する構造が非常に面白おかしかった。

 

第七位:「サヴァイヴィング ライフー夢は第二の人生ー」

 何故か、一向にレンタル化されないシュヴァンクマイエルの成人映画。公開当時17歳で観られず、厳しい戦いを強いられたが、ついにDVDを買う形で観ることができました。これだけ待ち望んだだけに、やはり期待通りの作品でした。フロイトやユングの理論を使い、自分の夢に出てくる美しい女の正体を模索する。この「オイディプス王」スタイルを、手間暇掛けたシュールな切り貼りとプチ動画で描ききることでシュールで爆笑、そしてインスピレーションを得られる作品となっていた。確かにR-18。シュヴァンクマイエルの本気の演出により、若干怖い。彼の描く夢の世界はピリッと刺激的なのでした。

 

第八位:「台北の朝、僕は恋をする」

 最近台湾の恋愛映画が熱いとバイト仲間が語っていたので鑑賞。

 オシャレに映し出される台北の景色を舞台に、パリに憧れる男とヤクザ、なんか巻き込まれた女の子の甘い夜の逃走劇に僕も恋をした。

 ヤクザが出てくるといってもジム・ジャームッシュの映画のようにどこか間抜けなのが肝。制作総指揮にヴィム・ヴェンダースがいるから、美しいラブコメにさらに磨きがかかったのかな?それにしても、フランス語のテキストを使って女の子を落とそうとするシーン、なんとロマンチックなことかw

 

第九位:「クライング・ゲーム」

 普通、戦場で捕虜になった男と見張りの人の物語って友情と悲劇で終わるのが定番である。この話もその予定調和に則って進む。しかし、何かがおかしい。40分ぐらいで総てが完了してしまう。まだ1時間程時間があるのですが、と思っていたら死亡した捕虜の恋人に会う話がスタート。ここまではまだ普通だと思っていたら、その恋人の正体がビックリで、そのとき映し出されるフォレスト・ウィテカーの表情が非常に面白く爆笑。そして見張りの人が所属する組織から、そのカノジョ暗殺指令が出るのだが、その対処方法も正体が正体だけにユニークだ。今年公開されたニール・ジョーダン最新作である「ビザンチウム」はいまいちだったが、これは一級の作品であった。

 

第十位:「死霊のえじき」

 ゾンビ映画なのに切なくなる映画。冒頭のビックリシーンや、密室内での死闘のシーンが楽しいのはもちろんだが、この映画の特徴は「博士」と「ゾンビ」の生と死を越えた愛である。「博士」が苦労して手なずけた「ゾンビ」。そのゾンビを理解のない者が殺そうとする。「博士」は必死になって止めようとするが結局殺害されてしまう。そのあとのゾンビの復讐シーンが非常にカッコいい。まるで「夕陽のガンマン」や「荒野の用心棒」のクリント・イーストウッドのようにカッコいいのだ。ゾンビ映画っていろんな発見があるから面白い。このゾンビ映画は切なくなる代物でした。