「オンリー・ゴッド」:バルト9にて

神のみが許す地獄の審判

「オンリー・ゴッド」:評価75

監督:ニコラス・ウェンディング・レフン 出演:ライアン・ゴズリング、
ビタヤ・パンスプリンガルetc...

 

 「ドライヴ」でカンヌ国際映画祭監督賞を獲ったニコラス・ウェンディング・レフン監督の最新作。「ドライヴ」のクールで泣けてくる映像美・音楽に惚れ込んでみる方要注意。ニコラスはそんな監督ではない。そして、これは監督のフルパワーで描いたヴァイオレンス映画なので、ただのアクション映画なのに「ブラック・スワン」並にトラウマになるホラーまがいの作品なのだ。

 実は、彼の作風「ヴァルハラ・ライジング」や「ブロンソン」を観るとよく分かる。まさに北欧名物ヘヴィーメタルの世界だ。「マチェーテ」のダニー・トレホさんもビックリの殺陣に人によっては拒絶反応を示すであろう。

 さて「オンリー・ゴッド」はと言うと、ストーリーは至ってシンプル。警察と闇稼業との血で血を洗う復讐劇だ。しかし、「アウトレイジ」のようなユーモア。待ってましたと言わんばかりのクールなアクションはない。いや、確かに撮り方はクールだ。建物のつくりを利用したり、トップショットを使ったり、フェイントを使ったりと飽きさせない攻撃を繰り出す。しかし、終始絶え間なく響き渡るエキゾチックで地獄の底に観客をつき落とすようなサウンドトラック、感情が欠落した人たちによる拷問に笑えなくなる。痛々しい。そして、いつグロ描写が来るか分からない恐怖。フリーフォールのてっぺんで制止したままの恐怖を90分も体験しないといけないのだ。しかもたちが悪いことに、これはホラー映画ではない。ホラーの常識が通用しないのだ。「ブラック・スワン」もそうだが、ホラー映画ではないホラー描写ある映画ほどトラウマになる映画はない。

 デンマーク人がつくる映画は人を奈落に突き落とす作品を作るのが上手いが、ラース・フォン・トリアーもびっくり作品と言えよう。

 さて中身はというと、原題の"Only God Forgives(神のみが許す)"を細部までこだわって作っていると言える。伊達に人を殺しているわけではない。主人公の闇ボクシングを仕切る男は、母に頭の上がらぬ男である。そして、兄弟がタイの警官に殺されたと母親に伝えられ、復讐する話にまでなった時、彼はいつ自分が殺されるかという恐怖の淵にたたされる。ポーカーフェイスに見えてかなりのびびりである。一方、タイの凄腕警官チャンは家族を守る正義故に悪を殲滅しようと刀で制圧する。いつか訪れる家族の危機を回避すべく訓練に明け暮れる。こいつがこの作品の肝である「神」だ。バンコクの闇社会を牛耳る神の怒りを買ってしまったチキンな男がいかにして許しを請うか。マザコンを克服して、自立できるか。この静かに切羽詰まらせる何ともいえない苦虫を、どキツい鮮血色の世界とヴァイオレンス描写に絡ませた描写。好き嫌いは極端に分かれるが、計算されたダーティな世界観に私は魅せられてしまった。日頃のストレスを辛口カレーで癒やす。こういう日も合ってもいいかな?