「ウルフ・オブ・ウォールストリート」:TOHOシネマズ渋谷にて

オトナのドラッグ講座

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」:評価85

監督:マーティン・スコセッシ 出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒルetc

 

 アカデミー賞映画としては非常に珍しい、日本のレイティングでR18いってしまった作品。確かに観ると分かる。これは子どもには絶対観せたくない作品である。終始Fワード(噂によると歴代Fワード使用度キング「パルプ・フィクション」を越えたそうだ)とSワード、ドラッグ用語しか飛び交ってない状況。FBIまでも買収して金融界の王者になろうとする極悪っぷり、モラルの欠片もない金融マンの人生を真似してほしくないであろう。

 そんな危険な映画だが、本当にドラッグとしての効能がある。どんなに頑張っても出世できない、苦しい社会に、ここまで華やかでドラッグやセックスにまみれても完璧にFBIと世間を欺く男の生き様は劇薬だ。自家ジェット機が墜落しそうになっても、海で遭難しそうになっても生き残る、仲間が逮捕されても密告されない無敵っぷりには憧れを抱くほどだ。

 さて本題に入ろう。

 この作品の原作はもちろん、当の本人ジョーダン・ベルフォートが書いているのだが、ビートニク小説のようにハチャメチャで誇張、時系列もバラバラのように見える。話も専門用語ばかりだし、終始「誰とヤッたか?」「このドラッグはどういう効能を持っているか?」を語っていて、ベルフォートが如何にして成り上がったかとか彼のビジネス戦略を知りたい人が読むと肩すかしにあう内容である。

 それをスコセッシが見事に再構築。彼の成り上がる経緯も描きつつ、彼のラりったライフスタイルもたっぷり描ききるスタンスはまさに神業である。クローネンバーグがウィリアム・バロウズの「裸のランチ」を映画化したときは、残念ながらバロウズの半生を追うぐらいしか出来ていなかっただけに凄まじい監督術である。

 さらに、危険な男ベルフォートを演じるディカプリオの演技もキレっきれである。近年、「ジャンゴ」や「華麗なるギャッツビー」等で汚れ役を演じまくって「タイタニック」の純粋無垢な欠片もないディカプリオ。完全に汚れ役が嵌まっているのだが、これは他の汚れ役作品を吹っ飛ばすぐらいクレイジーだ。本当にドラッグを使用しているのかと思わせるほど狂った彼の演技はもはや恐怖を通り超して爆笑だ。

 特に、幻のドラッグを使用したときのディカプリオの演技は観ているこっちまでラリるほどの狂気っぷり。さらに、ジョナ・ヒルとのデュエットまでしちゃうから爆笑を押さえるのに必死でした。

 子どもには観せたくないが、ストレスをためた人には観せたいグッドドラッグ映画。映像だけで観客を満足させる気満々な「ゼロ・グラビティ」を是非とも打ち負かして欲しい。主演男優賞にディカプリオを選んでほしいなと感じた作品でした。