「ロジャー・コーマン製作映画祭り」:自宅にて

インディーズの帝王学を観る

「殺人者はライフルを持っている!」~無茶ぶりから産んだ傑作と名監督~

評価:90点 

監督:ピーター・ボグダノヴィッチ

出演:ボリス・カーロフ、ティム・オケリーetc

 

 インディーズ映画界において、ほとんど赤字を出さずに面白い作品を輩出、後に巨匠になる監督を多数育て上げた伝説のプロデューサーがいた。その名はロジャー・コーマン!

 彼は合理的に安く映画を作るために、大学を出たばかりの映画熱ある人を多数起用。そして、厳しい制約を与えつつ、仕事させた結果、ジェームズ・キャメロンやフランシス・フォード・コッポラといった巨匠を沢山生み出した。

 そんな彼が発掘した監督にピーター・ボグダノヴィッチがいる。彼は朝鮮戦争出兵のために愛と友情を取り戻そうとするノスタルジックな作品「ラスト・ショー」や、ツンデレと詐欺師の珍道中を描いた「ペーパー・ムーン」などを撮った監督である。

 そんな彼のデビュー作が「殺人者はライフルを持っている!」。なかなかTSUTAYAにも置いていない、コーマン映画特集でも扱われない謂わば幻の作品だが、何故この作品がTSUTAYAでも紹介されないのかと思う程に面白い。

 

 なんたって、落ち目のドラキュラ役者と狂気のスナイパーが対決する。しかも、銃VS銃で勝負するわけではないのだ。ドラキュラ役者として威厳のある戦い方で勝利するというビックリストーリーなのだ。なんでこんな奇抜な脚本になったのかというと、ちゃんと訳がある。

 

 ロジャー・コーマンは契約が数日残されている怪物役者ボリス・カーロフを最後まで仕事させて金を得ようと目論むところから始まる。

 しかし、ロケをするには金がかかる。そうだ!数年前にカーロフ使って「古城の亡霊」撮ったじゃないか!本人出演20分、「古城の亡霊」引用20分あと40分ぐらい足せば映画が出来るだろうと思い立ち、ボグダノヴィッチに投げたのが始まり。

 そんな、主役の登場時間の半分が使い回しなんて無茶だろと普通の人は思うのだが、彼は違った。二つの話を交差させて、最後でドッキングさせる手法で以て条件を克服したのだ。

 一つは、ドラキュラ役者が自分のキャリアに限界を感じて引退しようと葛藤する話。もう一つは精神病んだスナイパーが街中で銃乱射する話。その関係ない話を繋げるのが映画館、しかもドライブイン映画館なのだ。

 確かに、映画館で銃乱射を行うシーンを盛り込めば20分使い回し制約の時間稼ぎができる。しかも、ドライブイン映画館は野外にあるから、スナイパーが暴れるには十分な立地である。

 問題は落ち目のドラキュラ役者のキャラをどう立たせるのか?それは実際に映画を観て確認して欲しい。本当にスナイパーのキャラを凌ぐ存在感。スナイパーを倒す彼のアクションに痺れる。

 発想の転換がキレッきれな傑作でした。

(写真はAmazonより引用)

「コックファイター」~迫力に欠けるニワトリ版ロッキー~

評価:75

監督:モンテ・ヘルマン

出演:ウォーレン・オーツ、リチャード・B・シャル

 

 公開当時、興行的に失敗したカルト映画「断絶」の監督モンテ・ヘルマン。「断絶」のせいでハリウッドから干されていた彼を救出しようとロジャー・コーマンが手助けするものの、またしても興行に失敗。赤字を出さないコーマンのプライドに傷を付けてしまった曰く付きの作品

 

 なんたってネタが闘鶏。闘鶏の存在を知ったのは僕が高校時代の時。模試の国語のテストで出題された。主人公の少年がやけにニワトリに情熱を傾けているな、映画化するのは難しいだろうなと思っていたらこんな作品と巡り会ってしまった。

 ただでさえ、ニワトリとニワトリを戦わせるスポーツを「ロッキー」のように熱いドラマ仕立てで描く斬新さを備え付けているのに、主人公が冒頭とラスト以外話さないという無茶設定。先日飛行機で終始ノー台詞でレッドフォードが演技する「オール・イズ・ロスト」を観たが、やっぱり顔と身体だけで演技するのは相当酷だぞ。だけれども、ウォーレン・オーツはその難役を軽やかに演じる。哀愁ある前半から、闘鶏で勝利を重ねてテンションが段々上がっていく主人公の様子がオーツの強烈なオーラで感じさせられる。

 

 ただ、残念だったのは闘鶏のシーン。迫力がない。ポケモンの序盤のように一つの技しか繰り出さないから、4戦目あたりから飽きてくる。ニワトリだけでなく人間を戦わせるシーンを入れたり、お色下シーンを入れてマンネリ化を阻止しようとする動きも虚しかったようだ。流石の撮影監督ネストール・アルメンドロス(「天国の日々」やヌーヴェルヴァーグ映画の撮影を担当)の努力も報われなかった。熱く闘鶏を盛り上げようという努力は感じられる。ドキュメンタリータッチとアクション的タッチを使い分ける努力はあったもののやっぱり厳しかった。確かに面白い。笑えるのだけれど、「ロッキー」みたいなものを知っているとちとガッカリだった。これを日本や中国で撮らせたら、ひょっとしてヒットするかもねw

(画像はAmazonより引用)